<今、「新安商人」(徽商)が脚光!>
中国は2010年、国民総生産で日本を抜いて米国に次ぐ世界第2位の経済大国になった。中国を経済大国に導いた一番の功労者は"中国の商人"という話がある。現在、中国には様々な商人がいる。ここで、主だった商人を整理してみたいと思う。
いま一番有名なのは、上海を舞台とする浙江省の商人。彼らは、「鬼に会うと鬼の声を出し、人に会うと人の声を出す」と言われている。「中国のユダヤ人」と言われる寧波の商人、全世界に進出している温州の商人がその代表だ。温州商人は、組織力と結束力と対外開放度が高い。
二番目は、広東省の商人。貿易業が盛んな南部沿海に属し、西欧の先進文物を早く受け入れた。清時代の「広東十三行」(外国貿易を独占した商人団)は有名である。
三番目は、山西省の商人。「山西商人」(晋商)は、明清時代に、全国に勢力を延ばし、中国の金融を支配した。近年では経済発達にともない、山西資本が沿岸大都市部の不動産投資を積極的に行なっている。
四番目は、安徽省の商人。「新安商人」(徽商)は、明清時代には、「山西商人」(晋商)と二分して、中国経済界を支配した。
五番目には、湖北省の商人と福建商の商人が挙らえる。湖北省は、賢い頭脳の持ち主で、
福建省は積極的で、挑戦的精神が旺盛である。
さて、今、改めて四番目の「新安商人」(徽商)が、中国の中で、大きな脚光を浴びている。それは、この「新安商人」の持つ「儒商」という性格に起因している。
世界中の資金と資源を集めて膨張するアジアの虎・中国のその成長の影で、社会の歪みも表面化してきている。
拡がる個人間、地域間の格差、すなわち、急速な経済成長がもたらす負の側面が、看過できない社会不安として浮かび上がってきている。こうしたある種の閉塞感の中で、中国の伝統回帰として否定され、その後の近代化においても顧みることのできなかった「儒教」に光が当たり始めている。
一方、企業活動に目を転じると、企業活動では、儒教を経営の柱にすえ、単なる利潤追求でなく社会貢献を目指す「儒商」の存在が注目されている。
「儒商」とは、「誠実信用」、「品質による社会還元」、「徳を重視する人材観」等を企業理念に掲げ、独自の企業文化を育もうとする企業のことである。そして、これこそが、まさしく「新安商人」(徽商)が辛亥革命前から100年に渡り、目指し、実践してきたことに他ならないのである。
新安商人を顕す言葉として「贾而好儒」("贾"は店舗を構えた商人を指す)があるが、まさしくこのことを物語っている。「道徳経済合一説」である。
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