<背後に利権を狙う大手人材ビジネス企業!>
今まで、述べてきたように、厚労省の立てた「職業紹介・相談業務にあたる公共機関ハローワークの窓口を全国の大学に設置、専門相談員を500カ所の大学に常駐させ、学生の就職を支援」という青写真は絵に描いた餅であることがわかる。ところが、それを見かけ上だけは、破綻させない役割を担うのが、大手人材ビジネス企業である。ここで、主役は交代し、"ビジネス利益"が最優先され、学生の将来は二の次になる。
同じ様な例では、数年前に、全国の大学の「就職課」がブームの様に「キャリアデザインセンター」に模様替えをした。ところが、内容が伴っているところは現在でも数えるほどしかない。大学にその能力がまったくなく、大手人材ビジネス企業に運営を丸投げした例も多く出ている。
小泉政権の経済閣僚として、規制緩和の旗振りをし、「労働者派遣法」を改正し、派遣業界を急成長させた"功労者"が、年収1億とも噂される大手人材ビジネス企業の会長に"究極の天下り"をしたことは記憶に新しい。この「改正労働者派遣法」は格差社会の元凶と言われている。
以下は、とくに今年、来年と就職を控える大学生諸君に、ぜひご理解頂きたいことである。
基本に戻ることである。大学の「ハローワーク」化を簡単に受け入れる大学も情けないが、それ自体は諸君の人生に大きな影響は与えない。ただし、これからは、大学を卒業すれば、必ず就職できるという幻想は捨てることだ。そうすれば、新しい可能性が見えてくる。
バブル期は、企業側の需要過多で、質より量「金太郎飴人材」が必要だった。しかし、バブル崩壊後は、企業は少数精鋭主義に転換し、量より質を重視する採用方法に変わって
いる。
「優秀でない学生に限って、有名・大企業を希望し、優良でない企業に限って、優秀な学生を欲しがる」というのは世の常である。しかし、どんな優秀な人材コンサルタントの手をしても、この仲介は不可能である。何よりも、この両者をマッチングさせること自体が、自然の摂理に反し、将来の破綻を約束するものだからである。
人材が成長すれば会社に物足りなさを感じ、企業が成長すれば、その程度の人材は不要になる。
唯一の解決策は一生懸命勉強して力をつけることだ。日本の大学生の勉強時間は、米国の10分の1である。中国、アセアン諸国の優秀な大学生の勉強時間は、米国を上回る。研究心、向上心、知識力の不足している学生を雇う優良企業は絶対にない。同時に、研究心、向上心、知識力のある学生を見過ごす有名・大企業もないのである。大学生諸君は、いつから始めても、一生は長いので、十分に時間がある。継続している時間にともない、簡単に先行者を追い抜くことも可能である。
これは、今がちょうど、時代が変化している時であり、混沌としているから言えることである。反対に、世のなかが、規則正しく動いていれば、限られた可能性しかない。そう考えると、意外と面白い時代とも言えるのだ。さあ、専門相談員(ジョブサポーター)とつまらない"茶飲み話"をしている時間はないはずだ。
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<プロフィール>
富士山 太郎 (ふじやま たろう)
ヘッドハンター。4,000名を超えるビジネスパーソンの面談経験を持つ。財界、経営団体の会合に300回を超えて参加。各業界に幅広い人脈を持つ。
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