<石油との価格対比>
エネルギーは、原油価格に翻弄される。原子力、火力だけでなく、水力、風力などほとんどのエネルギーは石油が目安になっている。原油価格との対比で、安いか高いかを比較し、たとえば太陽光での発電が、石油から作るエネルギーに対して効率的か否かを評価する。
バイオエタノール燃料もしかり。原油価格との対比で、ビジネスになるかどうかが決まる。80年代、イランイラク戦争を契機に、原油は1バレル=30~40ドル付近まで上昇した。国家アルコール計画をやり抜くと決めたブラジル政府は、「1バレル=30ドル以上だったら、アルコールで勝負できる!」と踏み、計画を推進していくことになる。
<砂糖価格高騰で供給不安定に>
サトウキビからは、もちろん、砂糖も作れる。バイオエタノール燃料を作るための、原料も、技術も、ブラジルは持っていた。農家は、サトウキビを精製する過程で、直近の価格を見ながら、砂糖にすることもできるし、エタノールを作ることもできる。バイオエタノール燃料の値段が安ければ、砂糖として出荷する方が農家にとって利益が多い。
供給を安定させるには、エタノールの価格がある程度、補償されなければならない。砂糖の出荷価格が高ければ、農家もエタノールを大量に生産することはできない。
砂糖価格の高騰や、国家アルコール計画での多額の補助金の取りやめなどで、一時、バイオエタノールで走る自動車は、燃料供給の不安定さ、フレックス車の燃費の悪さなどが理由で市場から消えかけた。しかし、90年代後半になり、原油価格が高騰。一時沈静化したものの08年7月には1バレル145ドルの最高値を付ける。石油、ガソリン価格が高騰したことにより、バイオエタノール燃料の注目度は、俄然上がった。石油に代わる新エネルギーとしてニーズが高まっていく。
2000年代に入って、ビジネスになると踏んだ各自動車メーカーがフレックス車を続々と市場に投入。企業努力により技術も向上した。バイオエタノール燃料の生産効率も上がったことで供給も安定。車種の増えたフレックス車は、市場に広く受け入れられ始めた。年月をかけて普及することとなる。
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