<平成の維新>
飯田氏は、自らの政策を「山口八策」「エネルギー維新」など、山口(長州藩)が中心となって成し遂げた明治維新にたとえることが多い。では、飯田氏自身を幕末の風雲を駆けた志士にたとえるなら?
「これまでの仕事をたとえるなら、坂本竜馬」。中立的で自由な立場から国や自治体に政策を説いてきたこれまで。土佐藩を脱藩し、"藩"にとらわれず、自由な発想で、維新へとつながる政策を説いた坂本竜馬と、確かにどこか似ているところがある。「今の状況は、第1次長州征伐の後に、功山寺で決起した高杉晋作でしょう」。
高杉晋作は、それまでのシステムからは考えられない武士と農民、町人からなる混成部隊、奇兵隊を結成し、既成概念を破る最強の部隊を作り上げた。晋作は、1865年、山口県下関市にある功山寺で、長州藩の藩政の権力を握っていた幕府恭順の俗論党の武力による打倒を宣言。挙兵した晋作は、三田尻で軍艦を奪取するなど、局地戦で勝利を収めると続々と義勇兵が呼応。奇兵隊など諸隊とともに正規軍と対峙し、俗論党を破った。藩の主導権を握り、長州を、藩を挙げての討幕へと導く。この藩内クーデターの成功が、長州と薩摩を中心とした明治維新の成就へと大きく前進させた。
結核で早世した晋作は、辞世の句で、「おもしろきこともなき世をおもしろく」と読んでいる。
地方だけでなく、日本のひっ迫した経済状況。成長著しいアジア各国との競争にさらされる日本の現況は、これから老いを迎える中年層にしても、未来を担っていく若者層にしても、決しておもしろいものではなく、厳しいものである。その日本を、山口で決起した飯田氏は、「おもしろく」創りなおすことができるのか。
今後の日本のエネルギー転換政策は、どういう方向へ向かうのか。今回の山口県知事選挙は、その分岐点となる。山口県民は、自らの手で、地域エネルギー維新を実現する道への第一歩を選ぶのか。否か。
明治維新では、反目した長州藩と、会津藩。明治維新の残した確執は、明治に入って以降も福島では、長州(山口)の方に足を向けて寝ると言われるほどまでに尾を引いた。しかし、くしくも、飯田氏が推進を目指す、平成のエネルギー維新は、山口が、福島を救うことになる。
山口県民は、現代の晋作の熱い決起に呼応するのかどうか。運命の選挙戦は、7月12日告示、29日に投開票――。
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