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老舗菓子店「さかえ屋」が役員を一新~菓子製造業の厳しい現状(中)
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2012年7月 3日 07:00

 福岡の銘菓「なんばん往来」で知られる福岡県飯塚市の(株)さかえ屋が業界内で注目を集めている。5月中旬、一部の新聞報道により創業家の中野利美社長以下、役員を一新し、新体制となることが発表された。あまりに突然の人事であり、その人事の面々が様々な憶測を呼んだ。テレビCMと番組で華々しく取り上げられている同社内で一体何が起きているのか。

<銀行は支援を表明>
 今回、なぜ創業者一族が退陣を迫られるような事態となったのか?メインバンク出身の人間が副社長に、現役の支店長が常務として出向する事態を見て、「ただごとではない」と思う人も多かっただろう。これについて西日本シティ銀行の広報部は「野路さんは当行が合併する前の西日本銀行の専務ですが、当行が派遣した訳ではありません。川島支店長につきましては出向という形で派遣しています。当行は他の多くの企業様にも出向させて頂いており、特別なことではありません」とコメント。最後に「さかえ屋様は重要なお取引先ですので、これからも支援していきます」とコメントするに留め、役員の入れ替えについては個人情報になるということで回答を避けた。現状はさかえ屋が銀行管理状態となったといっても過言ではない。銀行の了承なしで役員の大幅入れ替えは当然ながらありえないからだ。

0703_sakaeya.jpg (株)さかえ屋が今回のような事態に至った背景には様々な理由があるだろう。まず、菓子業界全体に言えるのは業界の中でも特に生菓子を取り扱う企業は苦戦しているということだ。近年においては洋菓子業界最大手だった(株)不二家が2007年1月に消費期限切れ材料で一部の洋菓子製造が行なわれていたことが発覚し、業績が悪化した。その後、製パン業界最大手の山崎製パン(株)との間で資本業務提携を結び、山崎製パンの子会社となって再生した。生菓子業界は賞味期限及び消費期限がとても短く、売れ残ればその分、ロス(損失)となる。利益を残すためにはロス、製造原価を減らすことが重要となるが、生菓子を製造販売する上で、これらの問題が大きくのしかかってくる。「ケーキを取り扱う生菓子店の場合、ある程度は商品を陳列しておかなければならない。ロスが恐くて少ししか陳列していないと、みすぼらしくなる。品揃えが悪いとお客さんの足も遠退く。だから、ケーキに頼らず、原価が低くて売れるほかの商品を多く売ることが店舗運営を乗り切るコツになる」と、とある業界関係者は語る。

<コンビニスイーツも同社の脅威に>
 2000年に入ってからケーキが"スイーツ"、菓子職人が"パティシエ"と呼ばれるようになった。欧州などで修行を積んだパティシエが店を立ち上げ、たちまちブームを呼び、行列となる。スイーツの店舗が増えることはチェーン店にとっては脅威であり、これにより既存店の売上高は徐々に減収傾向に陥ったと思われる。さらにコンビニ各社が低価格で万人受けするスイーツを開発、販売することも脅威となった。また、冷凍技術が発達したことで冷凍ケーキの味も以前と比べれば格段に良くなった。周囲の環境の変化が老舗の菓子店を苦しめているのは容易に想像できるものである。

(つづく)

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