西日本最大の歓楽街・中洲は3,000もの店が軒を連ねて斯く斯く然々と、小生も書いてきたが、実際に数えたわけではなく、そう喧伝されていたので引用していた。しかしながら、本当のところはどうなのだろう。気にはなっていたが、さすがに飲み歩いて確認していたら身がもたない。
6月某日、ライン不動産(有)が、実施した中洲地区の営業店舗調査の結果を発表した。それによると、中洲地区の営業店舗数は1,902、店舗数2,481のうち、稼働率76.66%であった。数字をみれば、思った以上に中洲が健闘している様子がわかる。調査は、同社がテナントビルを1軒ずつ回り、確認して行なった信頼のおけるデータだ。
クラブ、スナックなどの飲み屋は、店舗数1,858のうち1,318軒が営業しており、稼働率70.94%であった。なお、このほか飲食店、物販店、風俗店などはすべて稼働率が9割を超えていた。近年、いわゆる大箱の店が流行らなくなり、テナントが区分けされ部屋数が増加、また新しいビルができたことも考えれば、中洲の飲食店は最盛期でも2,000軒くらいだったのではないだろうか。
エリア別の数値で、飲み屋の健闘がうかがえるのは、稼働率83.90%の中洲3丁目。中洲1丁目は約9割の稼働率だが、そのほとんどが風俗店(こちらは飲み屋街と事情が多少異なるため、また機会がある時に書こうと思う)。
一方、中洲5丁目は、営業店舗数が81店舗(最大は中洲2丁目の766店舗)しかなく、明治通りを挟んで街の様相が一変、ホテルやマンションが目立つエリアとなっている。かつての映画館街も今やコインパーキング。人通りが少なく、同じ中洲といえその役割は異なる。中洲という街全体を見れば、1~4丁目に繁華街機能が密集していると言えそうだ。
「中洲は7割の稼働をバブル以降も維持し続けている」と不動産関係者はいう。もちろん入れ替りはその都度行なわれており、ここ数年は東京や札幌、大阪といった"外資系"の出店が目立った。これらの店は大型店が多く、また、本店から看板娘を連れてきたり、営業力のある売れっ子を引き抜き合ったりなどで人件費が高騰。結果的に客のフトコロを直撃した。しかし、こうした"外資系"は客離れからお互いに潰し合う結果となり、今ではそのほとんどが撤退。残っている店も、地域密着型のお手頃で遊べる営業方針を変えたところが多いという。
そして現在は、本稿下の「萬月おすすめリンク」でおなじみの藤堂和子ママのロイヤルボックス、リンドバーグや、中洲で「月下美人」など4店舗のキャバクラを経営するMLHグループといった「安全・安心で楽しく飲める!」をモットーとする地元経営者が奮闘。さらに、世代交代による店舗の入れ替りが増えているなか、内装費などで出店費用がかからないリース物件での新しいチャレンジが行なわれている。
移り行く時代とともに、内容も変わりゆく中洲。今回、数値として明らかになったことで、今まで見えて来なかった姿が浮き彫りになった。数年後、どのように変わっているだろうか。今の華やかさが今後も続いてほしいと祈るばかりである。
長丘 萬月 (ながおか まんげつ)
福岡県生まれ。雑誌編集業を経て2009年フリーに転身。危険をいとわず、体を張った取材で蓄積したデータをもとに、「歓楽街の安全・安心な歩き方」をサポートしてきた男の遊びコンサルタント。これまで国内・海外問わず、年間400人以上、10年間で4,000人の歓楽街関係者を『取材』。現在は、ホーム・タウンである中洲(福岡市博多区)にほぼ毎日出没している。
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