これまで、(株)日本医療環境サービスの不正行為を紐解いてきた。取材を進めるなかで、不正行為によって実現可能となった不当な価格が競争入札に持ち込まれ、被害を受けたと感じる同業者もいた。しかしその一方で、「これは同社だけの問題ではなく、産廃業界のシステム上の欠陥によって不正行為が生まれやすい土壌がある」という関係者の意見も聞かれた。
まず問題として浮かび上がるのが、これまで話題として挙げてきたマニフェスト(産業廃棄物管理票)制度の存在だ。排出事業者には、「委託した産業廃棄物が適正に処理されたか否か」を確認する義務が課せられている。ただ、廃棄物の動きを実際に見守り続けるのは不可能に近いし、そもそも排出事業者はいったん捨てたゴミに対してそれほど関心を持たないようだ。
こうした産廃処理のチェックを容易にしたのが同制度で、回収されたマニフェストを見れば収集から処理までの流れが把握できるようになっている。ただ実態としては、これまで述べてきたような、票自体の移動と廃棄物の移動が必ずしも伴わない不正行為がなされていた。これには制度上の問題がある。
マニフェスト制度は、1997年度に行なわれた廃棄物処理法の改正によって、すべての産業廃棄物を対象に義務付けられた。その後の改正内容を見ても、運搬・処理業者はあくまでも委託者であり、廃棄物は排出事業者が自らの責任で適切に処理するという、同法の基本原則に変わりはない。
端的に言えば、今回のような事例を行なって責任問題へと発展した場合、不正行為をした運搬・処理業者が処分を受けるのはもちろんだが、それ以上の大きな責任が排出事業者に降りかかることになるのだ。委託したらそれっきりという意識では、自らに火の粉が降りかかってくる恐れがあることを排出事業者は認識しておく必要があるし、その姿勢はただちに正さなければならない。
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