既報の通り、風俗店が集中する中洲1丁目は、風俗店用の112店舗(全体は139軒)のうち102軒が営業しており、稼働率91.07%と高い。しかしながら、「営業主体はここ数年で大きく変わった」(地元情報誌記者)という。外資の経営者の多くが撤退した飲み屋と違い、8年ほど前から、よその歓楽街から中洲へ進出してきた経営グループなどが店舗を次々と買っている。今や、地元経営者の店は指で数えるほどしかなく、1つの経営グループで複数店舗を持つことも珍しくなくなった。
外資の経営グループの躍進の一方、激しさを増す価格競争によって、風俗店で働く女性のワーキングプア化が進んでいる。「風俗業界もデフレ。『激安』『割引』といったキーワードが華々しく広告・看板を飾っている。今や安くても3万円ぐらいだったソープでも1万円という料金は珍しくない。店と折半なら、1本あたりの稼ぎは5千円ぐらいだろう」(前出の記者)という現状。これは中洲に限ったことではなく、風俗業界全体で、低料金をうたい回転率を上げて売上をあげる営業スタイルが増えている。
しかし、デフレによって客側の平均予算も減っているなか、低料金で回転率をあげるためには、これまで以上にサービスの質が求められる。「高収入と言えば風俗」といわれていたが、その内容における働く側の負担は増えている。
「稼ぎがいいと聞いて始めてみたけど、それなりのことやっているしね。指名がとれないと歩合や店の扱いが悪くなる。正直、割に合わないと感じて辞める子も多いと思います」と、現役の人気風俗嬢は話す。職場の同僚には、別の仕事をやりながら、週2、3日の割合で副業として働くパターンが増えているそうだ。
一方、「就職難を理由に、学校を卒業してすぐ風俗で働く『新卒デビュー』がいたけど、1カ月もせずに辞めていったよ」(某風俗店長)というケースも。求人誌には「誰でも簡単」「初心者大歓迎」といった言葉が踊っている風俗業界。しかし、"現実"とのギャップは、ここ数年で広がっている。
常に安定した指名が入る人気娘は店にとっても貴重な存在だが、そうした一部の勝ち組が、求人広告における収入の基準とされている向きもある。ただし、このクラスになってくると、接客サービスや客への付け届けなどの心配りはもちろんのこと、自分の健康・美容のメンテナンスも完璧。「ずっと年齢が変わっていないのは知っているけど、本当に歳をとっていないから」とは、一ファンの証言。この点は、昔から変わっていないが、決して気軽に高収入が得られる世界ではない。
長丘 萬月 (ながおか まんげつ)
福岡県生まれ。雑誌編集業を経て2009年フリーに転身。危険をいとわず、体を張った取材で蓄積したデータをもとに、「歓楽街の安全・安心な歩き方」をサポートしてきた男の遊びコンサルタント。これまで国内・海外問わず、年間400人以上、10年間で4,000人の歓楽街関係者を『取材』。現在は、ホーム・タウンである中洲(福岡市博多区)にほぼ毎日出没している。
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