<常に変化を受け入れる街>
アキバの人を引き付ける力は、「ほかにはない・ほかではありえない」というところにある。そこに集う客はパーツを買い集めてラジオを作ったり、マイコンを作ったりしていた。部品に関する特殊な知識を店員から聞いたり、客同士で、作り方や新しい部品についての情報を交換したり。その源流は、現在も変わっていない。
アニメショップの前でアニメに関する雑談をしたり、アキバを拠点とするAKB48の劇場近くでアイドルの写真を交換したり、雑居ビルに入っている店舗の中でカードゲームのカードをトレーディングしたり。DVDショップの前では、DVDを発売する無名なアイドルのプチ撮影会が行なわれたりしている。
路上でアイドルの写真を友達と交換していた20代男性ファンにアキバの魅力を聞いてみた。「街全体がテーマパークのような雰囲気が好き。AKB48も、アキバが拠点じゃなかったら今ほど人気になっていなかったんじゃないか。理由ですか?ありえないとは思いますが、拠点が渋谷だったら今ほど頻繁には通いませんよ(笑)」。AKB48が幅広い年代のファン層を獲得しているのも、アキバの雑多性、誰でも通えるハードルの低さ、度量の広さにあるのかもしれない。
映画マニアを自称する40代の男性は、20代のころからアキバに通っている。メイド喫茶には一度も行ったことがない。10店舗以上はある中古DVDのショップを巡るのが趣味だという。「そういえば、アキバに通いはじめてもう20年近くになりますが、そんな気がしませんね。20年前とは、全然違う街になっているし、変化が速く、その年、その年で新鮮だからでしょうか」とアキバの魅力について話す。「中古のDVDショップによく行くのですが、いつ行っても商品が入れ替わっている。安い商品やレアな商品で、買いたいと思った商品は、見つけたらその場で買わないと、30分後には売り切れてしまう(笑)。品揃えの豊富さが足繁く通う理由で、ネットで探しても見つからないようなアキバにしか置いていないようなレアな商品がたまに見つかるのが、飽きない理由。私のようなアニメオタクでもアイドルオタクでもない人にとっても足を運びたくなる街です」と、この街の吸引力について語る。変化を拒まなかった混沌とした街並みは、こだわりのある人々を魅了し続ける。
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