<従来からの商品に依存した経営>
同社は、2000年頃は約40億円を売り上げていたが、内紛による店舗分割などもあり、近年は減少傾向が続いていた。11年3月期の売上高は19億円。12年3月期に関しては若干の増収ではあったが、最終損益で若干の赤字を計上しているとコメントした。増収に至った要因としては、一時、店舗の閉鎖などを行なっていたがそれが一巡したことと、唐津店など新店舗をオープンし、店舗数が増えたことがある。ただし、増収を果たしているものの、最終損益で赤字を計上しており、厳しい経営環境下にあることを示している。
現在の商品別の構成比は、「千鳥饅頭」と「チロリアン」がそれぞれ約30%ずつ。パンのスベンスカが約10%、残りの20%がそのほかのアイテムとなっている。チロリアンが登場して以降、ほぼ半世紀にわたって、2つの商品だけが業績を支えていることになる。
浩司氏が社長に就任してからは、「基本をもう一度見直す」とし、新商品の開発よりも、既存の「かすていら」「丸ボーロ」などの商品の強化を行なっている。12年春頃、「かすていら」をリニューアルしたほか、12年8月より黒糖を使用した丸ボーロの販売を開始する予定。また9月には、福岡県産あまおうを使用した、チロリアンの販売を開始するという。
しかし、従来の商品のリニューアルを行なったとしても、それが劇的なヒット商品となり、現在の商品構成比を大きく変化させるほどの力があるとは考えにくい。同社からは、健生氏独立によりパン事業がなくなった。来期決算からはパン事業での売上はなくなるため、千鳥饅頭、チロリアンの商品構成比率はさらに上昇する。従来の商品には、相応の集客力はあるが、往年のファンが多く、年齢層の高さは否めない。新規層の開拓ができる商品開発は必要であることから、話題性があり、草創期の商品に依存しない「千鳥饅頭」「チロリアン」に次ぐ看板商品の開発は急務である。
<それぞれに残された課題と方向性>
現経営陣の親世代の持分不動産の問題はまだ続いている。10年7月で閉店となった、タイル張りで独特な雰囲気を持っていた中洲の店舗は7分の1の所有権を5名、7分の2の所有権を1名の計6者が所有している状態が続いている。立地は中洲の幹線沿いという理想的な条件ながら、独断で手を付けられない状況となっている。閉店から早2年となるが、持分不動産問題の早期解決が求められる。
健生氏は、12年3月に(株)アイラを設立。資本金は100万円であるところを見ると、同社からの支援でなく、完全独立の公算が高い。スベンスカ2店舗(大丸福岡天神店、大丸パピヨン店)のほかに、12年5月より天神プレイスWEST棟1階にて「BROT LAND」の商号でパン屋を展開している。
当面は「BROT LANDを早く軌道に乗せること、スベンスカ2店舗でしっかり利益を出していくこと」を目標に掲げた健生氏。父・光博氏の想いを胸に事業を引き継ぎ、独立を果たした健生氏は、今後、本当にスベンスカを守れるかどうか、その手腕が問われることになる。
残された同社も、従来商品に依存した体質や親世代からの不動産問題など、数多くの課題を抱えながら事業を行なっていくこととなる。
経営方針のベクトルの違いから、2つに別れた兄弟たち。果たしてどちらの方向に進んだ方が良かったのか――今後、それぞれに問われていくことになるだろう。
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<COMPANY INFORMATION>
代 表:原田 浩司
所在地:福岡県糟屋郡新宮町緑ケ浜1-2-5
(登記上):福岡市博多区上呉服町10-1
創 業:1630年
設 立:1997年8月
資本金:1,000万円
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