<「力の信奉者」ロシアの南下政策に対抗してきた日本>
日本が近代国家としての歩みを始めた頃から、日本とロシア(ソ連)は地政学的に対立関係にあった。ロシアの不凍港を求めた南下政策と、飽くなき領土膨張主義は、日本の安全保障上の脅威となり続けた。
その結果、日本は日露戦争を戦い、辛うじてロシアの南下を防いだ。そして日本は朝鮮半島と中国における権益を獲得し、ロシアから南樺太の割譲を受ける。
戦争で失ったものは、戦争で取り返すしかない。このことは、必ずしもすべての領土問題にあてはまる訳ではないが、「力の信奉者」であるロシアを相手にした場合には、話は違ってくる。
日本が米戦艦ミズーリー号艦上で降伏文書に署名した昭和20(1945)年9月2日、スターリン首相はソ連国民に対して「40年間の怨念(日露戦争での敗北)を晴らすときをじっと待っていた」という戦勝演説を行ない、南樺太、千島列島の軍事占領を正当化した。
さらに付け加えれば、スターリンは北海道までも軍事占領しようと目論んでいたことが、ロシア側の資料から明らかになっている。
<北方4島の地政学的な意味>
ロシアにとって、日本から奪い取った北方4島、そのなかでも国後島と択捉島は、オホーツク海を内海化し、他国(外敵)の侵入や干渉を完全に排除できる地政学的に重要な島となっている。
千島列島の海域は、全般的に水深が浅いため、潜水艦を含む艦船の航行は制約を受けるが、国後島と択捉島の間を通る国後水道だけは、幅約22キロメートル、水深が最大約500メートルもあり、オホーツク海から太平洋へ自由に進出する出入り口となっているからだ。
また択捉島は千島列島のなかで最大の島であり、かつて真珠湾攻撃に向かう日本海軍の連合艦隊が停泊した単冠湾という大きな港湾もある。大型飛行場の建設が可能な平地も確保することができる。
ロシアにとっては、北方4島は安全保障上の重要な地域なのである。
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<プロフィール>
濱口 和久 (はまぐち かずひさ)
昭和43年熊本県菊池市生まれ。防衛大学校材料物性工学科卒業。陸上自衛隊、舛添政治経済研究所、民主党本部幹事長室副部長、栃木市首席政策監などを経て、テイケイ株式会社常務取締役、国際地政学研究所研究員、日本政策研究センター研究員、日本文化チャンネル桜「防人の道 今日の自衛隊」キャスター、拓殖大学客員教授を務める。平成16年3月に竹島に本籍を移す。今年3月31日付でテイケイ株式会社を退職し、日本防災士機構認証研修機関の株式会社防災士研修センター常務取締役に就任した。『思城居(おもしろい)』(東京コラボ)、『祖国を誇りに思う心』(ハーベスト出版)などの著書のほかに、安全保障、領土・領海問題、日本の城郭についての論文多数。5月31日に新刊「だれが日本の領土を守るのか?」(たちばな出版)が発売された。 公式HPはコチラ。
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