<ロシアに北方4島を日本に返還する意思はない>
玄葉光一郎外相が7月27日からロシアを訪問し、ラブロフ外相、プーチン大統領と相次いで会談した。日本政府(外務省)は、北方領土問題解決への意欲を表明しているプーチン大統領の真意を探るのが目的だったが、プーチン大統領からは、一言も北方領土問題への言及はなかった。
一方、今年7月3日、メドベージェフ首相が2度目の国後島訪問を強行した。今回はゴロデツ副首相、イシャエフ極東発展相ら5月に発足したプーチン政権の新閣僚も同行している。
日本政府はこれまでロシア側の政府要人が北方4島に足を踏み入れる度に「国民の感情を傷つける」として抗議していたが、今回も完全に無視された格好となった。
おまけにメドベージェフ氏は島民との対話で、北方四島について「一寸たりとも渡さない」と述べた。日本政府が「極めて遺憾だ」などと反発していることについても、「私にとって日本の反応などどうでもよい」と述べている。同行記者団が日本側の反応について聞くと、「質問に応える時間を費やしたくない。ロシアの首相が自国の領土にいることに何を議論するのか」とまで言ってのけた。
メドベージェフ氏の発言は、日本を完全に見くびった態度であり、絶対に北方4島を返還する気のないことをあらためて明らかにした証拠と言える。
<甘い幻想は捨てよ>
日本の外務省幹部のなかには、「ロシア側は大統領と首相の間で意思疎通ができていないのではないか」とする見方もあるが、それは大きな認識の間違いである。
プーチン氏は大統領選挙期間中、「日本との領土問題に終止符を打ち、双方に受け入れ可能な形で解決したい」と述べ、北方領 土問題で日本側に譲歩する姿勢を見せたりもしたが、歯舞群島・色丹島の2島を返還するとした昭和31(1956)年の日ソ共同宣言から譲歩するような発言は一切していない。
また、平成23(2011)年9月には、プーチン氏の側近であるパトルシェフ安全保障会議書記が歯舞群島の水晶島を訪れ、ロシアは歯舞群島・色丹島の2島の返還すら拒否するかのようなメッセージを発している。
メドベージェフ氏とプーチン氏は、北方四島に対して同じスタンスで連携しているのは明らかなのである。
日本政府はロシアとの北方領土交渉において、甘い幻想は捨てるべきだ。
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<プロフィール>
濱口 和久 (はまぐち かずひさ)
昭和43年熊本県菊池市生まれ。防衛大学校材料物性工学科卒業。陸上自衛隊、舛添政治経済研究所、民主党本部幹事長室副部長、栃木市首席政策監などを経て、テイケイ株式会社常務取締役、国際地政学研究所研究員、日本政策研究センター研究員、日本文化チャンネル桜「防人の道 今日の自衛隊」キャスター、拓殖大学客員教授を務める。平成16年3月に竹島に本籍を移す。今年3月31日付でテイケイ株式会社を退職し、日本防災士機構認証研修機関の株式会社防災士研修センター常務取締役に就任した。『思城居(おもしろい)』(東京コラボ)、『祖国を誇りに思う心』(ハーベスト出版)などの著書のほかに、安全保障、領土・領海問題、日本の城郭についての論文多数。5月31日に新刊「だれが日本の領土を守るのか?」(たちばな出版)が発売された。 公式HPはコチラ。
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