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「おうかがい」で決められた? 福岡市・中国公務員研修受入(後)
行政
2012年8月 6日 07:00

 中国政府との覚書締結(7月6日)の3日前まで公表されなかった福岡市の中国公務員研修受入。同案件は昨年11月、(財)日本国際協力センター(JICE)から中国を対象にすることをすすめられたことを皮切りに、水面下で計画が進められていたことが情報公開された資料から読み取れる。前回、昨年12月の中国国家外国専家局の日本事務所を福岡市職員が訪問していた際、中国公務員受入について大筋で決められていたことを報じた。

 ここまでの経緯を振り返ると、まず、福岡市は、海外からの視察・研修に関する国際協力事業について、外務省やその関係団体(JICA、JICE)に対し、福岡市の特長をプレゼンし、活用を呼びかけるなどの"営業"をかけた。ところが、JICEから中国からの受入をすすめられ、中国公務員の海外研修について中国国家外国専家局の認定機関として直接的なアプローチをかける方針に転換。市の外郭団体である(公財)福岡アジア都市研究所(URC)は、中国国家外国専家局に認定の申請を行なうこととなった。

memo_s.jpg 年が明けて2012年1月12日、中国国家外国専家局が、山崎一樹 福岡市副市長を表敬訪問した。情報公開された関連資料によると、この時、山崎副市長は「日中国交正常化40周年の記念すべき年に、福岡市が中国の姉妹都市だけに止まらず、政府の人材育成機関と深い関係を持てることは非常に望ましい」「福岡市(国際部)とURCで、専家局との間に人材交流のできる太いパイプを作れることを希望している」などと発言。
さらに同席した総務企画局長は、福岡市の節水技術を中国の節水型都市づくりに活用してもらいたいなどと発言した。この時点で福岡市が中国公務員研修受入について、中国に対して積極的な姿勢を見せていたことが読み取れる。

 この後、12年4月24日に、福岡市総務企画局国際部国際課長以下4名(URC職員2名含む)が北京・中国国家外国専家局を訪問。この時には、「今後のスケジュール」として、13年4月以降に中国公務員の研修受入開始予定とされている。
そして、中国国家外国専家局と交わす覚書が起案されたのが12年7月2日。同案は即日決裁され、翌3日に高島市長が記者会見で公表する運びとなった。ただし、7月6日の覚書締結のために、高島市長以下、総務企画局国際部職員3名の旅行命令が出されたのは6月13日であった。

 福岡市が中国に対し、中国公務員研修受入について積極的な姿勢を示しだした1月から約半年間、同件に関して福岡市議会への報告・相談はなく、市民への公表もされなかった。受入対象は中国の公務員であり、外交にも関わる問題でありながら、事後報告と言えるタイミングで公表した背景には、市長、市幹部における国際情勢の認識の乏しさがうかがえる。
また、中央への"おうかがい"から水面下で対外的なやり取りが進められていたという実態は、日本の外交・安全保障の脆弱さを露呈した。「地方のことは地方で決める」という地方分権でも、国と地方の役割分担というところで、外交・安全保障は国の役割という考え方が主流である。

 福岡市は、中国公務員研修受入に関し、「すでに中国から観光客が訪れている」として安全性を強調する。しかしながら、やって来るのは中国の公務員であり、研修先も一般の観光客が訪れるような場所ではない点がスッポリと抜けている。今は、安全性を担保するものがあるのか、はっきりと示されていない状況だ。国際問題に関わる情報漏洩などが起きた場合、福岡市レベルで責任がとれないことは明白であり、繰り返しになるが、そもそも誰もやろうとしなかったから「日本初」なのではないだろうか。

【市政取材班】

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