地元住民らが福岡県に対し違法な廃棄物の撤去を求めた「義務付け訴訟」が福岡地裁に提訴されたのは、2005年12月。その後、裁判上の決着がつくまでに約7年かかった。最高裁が7月3日付で県の上告を棄却し、住民側が勝訴した2審・福岡高裁判決は確定した。
<最高裁は"三行半"で上告棄却>
県の上告を棄却した最高裁決定は、上告を棄却しただけでなく、上告そのものを受理しなかった。違法産廃を放置してきた福岡県の廃棄物行政を司法が厳しく批判したことの表れだ。決定文は、いわゆる"三行半(みくだりはん)"で、県の上告は端にも棒にもかからない"無理筋"なものだったことがはっきり示されている。
福岡県(上告当時は麻生渡知事)は、福岡高裁判決で負けても「間違っていない」と居直り、県の予算をつかって上告して、県民の税金と時間を浪費したことになる。上告直後に、県議会が上告取り下げを決議(11年2月22日)したのにも県は耳を貸さなかった。
福岡高裁が鑑定調査し、処分場の地下水から鉛が検出され、「地下水が周辺住民の生命、健康に損害を生ずるおそれがある」として措置命令を命じて以降も、福岡県は上告し争い続けた。
住民の生命安全への責任を果たす行政ならば、高裁判決後ただちに措置命令の内容の検討作業に入るべきだった。住民の生命健康に被害が起きてからでは遅い。
<謝罪より先に「残念」というのか>
福岡県は、「業者は行政指導・命令に従い改善された」として、違法を見逃してきた責任がある。これまでの産業廃棄物行政の誤りを福岡県が認めることが出発点だ。
ところが、最高裁で負けても反省していないかのような態度が福岡県にみられた。
最高裁決定を受けての県の記者会見(7月4日)で、江口勝県環境部長は、原告や住民への謝罪の言葉はなく、「県の主張が認められず誠に残念だ」と述べたからだ。
原告・住民側は驚きあきれはて、怒り心頭に達している。
小川洋知事は7月10日の定例記者会見で「判決を真摯に受け止め、必要な措置を取る」「住民の皆様には今回の最高裁の判断が出るまで時間がかかりましたことを、心苦しく、また申しわけなく思っています」と述べたが、言葉だけの謝罪であってはならない。
長崎県では、大村市の産廃処分場で、「埋立許可区域外に産業廃棄物を埋め立て、生活環境の保全上支障を生ずるおそれがないような措置を講じていない」として、業者の(株)ウィックに対して出した措置命令で、処分場の区域外に埋め立てられた廃棄物の全部を撤去するよう命じた(2009年2月)。その後、措置命令に従わなかった業者と社長らを廃棄物処理法違反で刑事告発まで行って、業者に対し厳正な態度で臨んでいる。
<原中県議「新しい福岡県の産廃行政を」>
これまで福岡県の廃棄物行政を正してきた原中誠志県議(民主党・県政クラブ県議団)は、「民主党は、9月県議会で、飯塚市の産廃処分場問題を代表質問のトップで取り上げる」と明らかにした。「民主党は、昨年2月には、上告取り下げを求める決議を提案するなど、これまで継続して取り上げてきた」と語る。
原中県議は、「どのような措置命令を出すかどうかは、小川知事が『県民幸福度日本一の福岡県』のスローガンのもと、『県民の生命、財産を守るのは県の最重要課題の1つ』とかかげるなら、その試金石になる」と指摘する。小川知事に対し、「今までの産廃行政を見直し、小川カラーの目玉として、面目躍を如示すとき。新しい福岡県の産廃行政をつくってほしい」と述べ、次のような注文を付けた。
「これまで裁判中だといって現地にも行こうとしなかったが、結果がでたのだから、小川知事は現地に足を運び、住民の声を聞いて、支障の除去をやって、2度とこういうことが起きないようにすべきだ」
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