――行政・地域が一体となった防災対策について、お聞かせいただければと思います。

　金子市長　毎年、梅雨前には防災訓練・水防訓練を行なっておりますけれども、今年は地震に備えて自衛隊にも参加していただいて、市と消防本部、消防団、建設業組合、医師会など22団体のご協力を得て、災害に備えていました。地域では、災害時に高齢者や障害者などの要援護者に対する避難支援体制の確立が急務です。柳川市には19の小学校がありますが、昨年、校区ごとに地区の社協を中心とした「自主防災組織」を、行政区長さん、民生委員さんにご協力いただき、組織づくりを進めています。市民の皆さんも50年に１回となると、時代も変わり人も変わっておられます。記憶がない人も多い。そこで今回、浸水した電柱に印を付けようかと考えています。「2012年７月14日に水害」――と、この記憶を子どもたちに引き継いで、常に水害に対する意識を持っておくようにしたいと考えています。今回は堤防が決壊しましたが、次の時代、50年後、100年後のために、写真などを記録として残しておきたいと思っています。

　――学校や地域の安全確保についてはいかがでしょうか。

　金子市長　今回の災害は、避難勧告や避難指示、河川状況などの連絡、伝達方法に課題が残りました。これまでは、サイレン吹鳴や広報車での呼びかけ、消防の伝達メールでの通知（約2,000人登録）、行政区町への電話連絡などで行なってきましたが、住民に行きわたらない面がありました。

　今年度、当初予算で「防災行政無線」整備費１億5,000万円を計上し、本年度中に整備しようとしていた矢先に災害が発生しました。今後、できるだけ整備するとともに、携帯電話のエリアメールも活用して、住民の皆さんに迅速な情報の伝達を行なっていきたいと思います。

　――市内の１級・２級河川を管理する国や県、矢部川地域の自治体との連携、連絡体制はどのようにお考えでしょうか。

　金子市長　筑後川・矢部川流域の市町村や住民などで、「河川情報モニター会議」が毎年定期的に開催されています。また、矢部川流域の５市１町で「矢部川改修期成同盟会」を組織していますが、防災対策として治水事業の推進を、毎年関係機関に対し要望しています。県が主催して、出水期に毎年水防会議を開催し、緊急時の連絡体制などを協議しております。

　私がこれから提案したいのは、県営ダムの日向神に水の流入状況、放流状況をリアルタイムで、矢部川の流域市町村すべてに備え付けるべきではないかと考えています。河川の主要な地点での水位は、船小屋や新村橋などはインターネットでわかるようになっていますが、日向神ダムは電話で確認しないとわかりません。

　県においては、リアルタイムで市町村に放水量などの情報が伝達され、松原堰のラバーの調整状況や沖端川入口、日向神ダムの状況がわかる定点カメラとシステムを早急に構築していただきたいと思います。今回の九州北部豪雨災害で甚大な被害を受けたので、今後も近隣自治体とともに、いっそう強く事業の推進を要請してまいりたいと思います。

　椛島県議　ちょうど一昨日に、黒木・八女を視察させていただき、昭和28年の災害時の河川の矢部川本流の決壊箇所を見に行きましたが、同じように決壊していました。まったく同じ場所です。28年の災害復旧の記念碑が立っているところで、同じようにやられているのです。その地域の行政区長さんも、「日向神ダムができたのだけれど、同じことなんだ」とずいぶん悔やんでいらっしゃいました。

　ところが、八女の県会議員の先生や地元の方のお話を聞くと、相当量を防いだことは間違いないのだけれども、実は矢部川から支流に流れ込む合流地点の被害がものすごく大きかったそうです。ですから、日向神ダムがなかったら、とんでもない被害になっていたことは間違いありません。枝葉になっている支流からの流入量も相当なもので、矢部川本流に合流した地域で被害が拡大したのです。そういうことを含めて、流入量がどうだったのかということと、本流と支流とが合流した時の雨量がどう変化したのかということを今回しっかり検証しないといけないとつくづく感じました。おそらく、上流から中流に入る八女市内に入る地域は、矢部川の川の幅の何倍もの地域に流木が散乱しており、谷川のようなところと広範囲に散乱していますから、今回の教訓を活かしての防災対策は、喫緊の課題だと思います。

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