<労働からの解放>
今、日本の現世には【天国暮らし】を行なっている階層が大量に発生している。大半は老人層である。選ばれた極少数のエリート層が恩恵を被っているのではない。一般庶民から選抜された多数の者どもが【天国暮らし】を満悦しているのである。「縄文時代に身分格差の無い原始共同体の世界があった」という学説があるが、その時代では飢えとの闘いが深刻であった。現在の【天国】の出現は日本の有史以来、初めてのことだ。ただ永遠の持続が可能かと言えばそれは不可能である。現世に太平の時代が長期化するはずがない。
【天国】の規定を明確にしよう。規定を徹底的に追及すればするほどマルクスの【共産主義社会】と【仏教の極楽黄土=天国】とが同一に見えてくるのである。(1)まずは労働搾取から解放が第一前提となる。広義共産主義の社会も天国も飢えの恐れがないから働くこと必要がなくなる。世のなかには生活の必需品が満ち満ちているのだ。筆者はかねてより「仕事を通じて己を鍛える」という労働観を抱いている。このような陳腐な思考をする人物は【天国】の社会においては忌み嫌われる存在と化す。
(2)労働搾取からの解放。労働の解放が可能になると自ずと人間関係はフラットになる。平等になるということだ。日本の歴史上、物資的に豊かな社会で万民が対等になる現実が誕生したのである。
(3)労働から解放されるということは各人が「24時間」という与えられた時間を自由に使えるということを意味する。各人、各様に好きな時間の選択ができるのだ。個人の個性が大いに伸ばせる環境が整備されたのである。こういう社会では争いごとも生ぜずに平和が続く。まさしく"桃源郷"がこの福岡の地に、日本の地に現れたのである。
<束の間の、一瞬の極楽往生=天国暮らし>
では、日本に登場した【天国】は永続化するのか!!答えは「ノ―」だ。時代は常に変遷する。この【天国暮らし】を享受している老人層が近々、国家財政を破綻させると明言できる。自治体には、現役時代に苦労をし、国家へ貢献してきた方々に、安全・安心に老後を暮らせるサービスを提供する義務はある。しかし、若者たちを犠牲にしてまでのこととなれば矛盾が生じる。世代間闘争も勃発するであろう。老人たちは、これが『束の間に繁栄』であることを認識する謙虚な姿勢を持つことが大切だ。
度々指摘してきた。日本全国各地に、平等に繁栄した時期が到来したことがあった。田舎に帰れば福岡では建てられない豪邸を誰もが建てていた。筆者も「これは故郷に帰ったほうが得かもしれない」と、悩んだこともあった。身分格差がほぼ消滅した。学歴に関係なく手にスキルを持った階層も頑張れば中産階層に属することができる社会が実現したのである。こういう時代は治安も良い。この理想郷と評価していい期間は昭和53(1977)年から昭和63(1987)年および平成元年までの約10年間であった。
おそらく将来の歴史家はこの10年間を「日本史上で最も国民一人ひとりが経済的な豊かさの恩恵を被った素晴らしい繁栄のテン・イヤーズ(10年間)」と、評価することであろう。1945年以降、すなわち第2次世界大戦で敗北した後、日本国民は必死で経済復興に邁進した。結果40年の集大成で黄金時代を迎えたのである。経済的に日本が豊かになったからこそ老後制度の充実が図れるのだ。この老後制度の充分な機能発揮は10年遅れる。
こういう時代の条件が整ってこそ、「【天国暮らし】の保証がある。束の間がある」という認識を抱いていただきたいのである。永遠に続くという保証はない。
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