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全米で離婚原因の25%に~『フェイスブックが危ない』 守屋英一著(文春新書)
書評・レビュー
2012年8月16日 14:00

 著者は日本IBMの経営品質・情報セキュリティ推進室に勤務。社内の不正アクセス事件およびISMS内部監査を担当するセキュリティの第一人者である。社外活動として、警察庁「不正アクセス防止対策に関する官民意見集約委員会 実態把握WG」をはじめ、経済産業省、総務省等の構成員、研究員としても活躍中である。

 現代はインターネットなどIT(情報技術)の発展により、デジタル化された膨大な情報が蓄積・利用できる「ビッグデータ時代」と言われる。このことは、同時にプライバシー保護をこれまで以上に意識しなければならない社会になったことを意味する。

 フェイスブックの利用者が急増している。2012年3月末現在の利用者は世界で9億人。毎日、約3億枚の写真がアップロードされ、「いいね!」ボタンがクリックされた回数は1日に32億件以上に上る。日本での利用者も2012年3月現在で1,000万人を突破、今年中に1,500万人を超えると予測されている。2010年には、約200万人だったことを考えるとすさまじい増殖ぶりだ。

 メディアには、「フェイスブック活用法」や「ビジネスに生かすフェイスブック」などといった魅力的なタイトルが溢れ、フェイスブックの輝かしい面ばかりがクローズアップされている。
 しかし輝きが強くなれば、影の面も同様に濃くなる。フェイスブックでは、個人情報に加えて、趣味・嗜好・思想といったより深い情報が登録され、その情報が解雇や離婚およびサイバー犯罪の原因になることを認識している日本人はほとんどいない。著者は、読者に警鐘を鳴らすと同時に、「インターネットを少しでも安全に利用してもらいたい」という思いでこの本を書いている。

・日本女性の5人に1人が、フェイスブックなどのSNSでストーカーを含め「苦い経験」。著者の知り合いの女性は個人の携帯番号がフェイスブック上で一般公開されていた

・全米で離婚した夫婦の25%が離婚の原因の1つにフェイスブックを挙げている。当事者 の行動が丸見えになるので、不倫現場の「証拠」として最適(米婚姻関連弁護士学会)

・人事担当者の22%がSNSで就職希望者の個人情報を集めており、34%は応募者の記載 事項の内容で採用対象者から除外している(米国)
 日本企業の人事担当者も、気になる学生や転職希望者については、フェイスブックなどインターネットで検索をかけるのは常識だ。苦労なく求職者の素行調査ができるのだ。


 インターネットの世界に100%安心できるスペースなどはない。フェイスブックによってプライバシーが失われ、丸裸にされてしまうことは誰にでも起こり得る。情報は1度流出すると爆発的に拡散し元にもどすことができないからだ。

 結構怖い話がたくさん載っている。著者の意図とは違うが、一読者として本当に"フェイスブックは必要なのか"と感じてしまった。一読の価値はあると思う。

<プロフィール>
三好 老師 (みよしろうし)
 ジャーナリスト、コラムニスト。専門は、社会人教育、学校教育問題。日中文化にも造詣が深く、在日中国人のキャリア事情に精通。日中の新聞、雑誌に執筆、講演、座談会などマルチに活動中。


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