原発事故の影響を受け、わが国では原子力発電の将来に危険信号が灯っている。言うまでもなく、電力不足も深刻化。しかし、禍転じて福となす。そうした逆転の発想こそ今、求められている。
たとえば、シリコン電池で夜間電力を蓄電し、昼間と夜間は単価の安い夜間電力を使う。太陽光発電分はすべて販売に回す。そして電力の昼夜の平準化を通じて昼間の電力需要を削減する。こうしたエネルギー循環が可能となれば、電力料金をゼロにできる。
要は、従来の発想にとらわれないことだ。では、電力料金ゼロの「電気自給自足型住宅」は本当に実現できるのか。答えは「可能かどうか」ではなく「いつか」ということになりつつある。
実際、「未来は明るい」。電力料金ゼロ住宅が完成する前に、東京・大阪間を充電なしで走行できるシリコン電池の電気自動車が登場するだろう。というのもシリコン電気自動車は理論から実験の段階に近づいているからだ。ご承知のように、エネルギーや環境問題への配慮から、最近、電気自動車が話題となっている。確かに、現在普及しているハイブリッドといえども、公害がゼロというわけにはいかない。その点、自然再生エネルギーを利用した電気自動車が普及すれば、地球環境問題には朗報となるだろう。
振り返ってみれば、第1次電気自動車ブームが巻き起こったのは、1990年代の後半であった。ガソリン・エンジンによる大気汚染、原油価格の世界的な値上がり、さらに言えば、石油の枯渇という近未来シナリオが追い風となった時である。世界最大の自動車メーカーである、米国のゼネラル・モーターズは世界初となる「EV1」と呼ばれる電気自動車を開発。
しかし、カリフォルニア州でほんの数百台が売れただけで、生産中止となってしまった。その理由は極めて単純明快である。第1に、1台5万ドルという値段の高さ。第2に、走行距離が新車で100キロしかない。しかも、バッテリーの劣化が早く、2年目では航続距離は約70キロ。3年目になれば40キロしか走ることができなかった。
そして、劣化したバッテリーを新品に交換しようとすれば新たに2万ドルの経費がかかるという金食い虫。そのため、鳴り物入りで登場した世界初の電気自動車は3年で寿命を終えた。
自動車王国アメリカの起死回生を意図し、アメリカのクリントン大統領は新たなバッテリーを開発させるべく、日本円で5,000億円もの開発資金援助制度をスタートさせた。「経済回復・再投資法」の一環である。実際、この資金援助制度を利用し、40社ほどの企業が開発に取り組んだが、ゼネラル・モーターズの電気自動車を超えるバッテリーはどこも開発することはできず、クリントン大統領が準備した資金援助制度も失敗に終わってしまった。
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<プロフィール>
浜田 和幸(はまだ かずゆき)
参議院議員。国際未来科学研究所主宰。国際政治経済学者。東京外国語大学中国科卒。米ジョージ・ワシントン大学政治学博士。新日本製鉄、米戦略国際問題研究所、米議会調査局等を経て、現職。2010年7月、参議院議員選挙・鳥取選挙区で初当選を果たした。11年6月、自民党を離党し無所属で総務大臣政務官に就任し、震災復興に尽力。現在、外務大臣政務官と東日本大震災復興対策本部員を兼任する。
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