<北方領土、竹島、尖閣諸島の今>
北方領土はロシアに、竹島は韓国に不法占拠された状態が続いている。7月3日にはロシアのメドベージェフ首相が国後島に上陸、8月10日には韓国の李明博大統領が竹島に上陸した。
日本が実効支配している尖閣諸島までもが中国に不法占拠されそうな状態だ。8月15日には香港の活動家らが魚釣島に不法上陸している。
日本政府は領土問題への対応を考える上で、フォークランド諸島奪還をめぐる英国のサッチャー首相(当時)のリーダーシップを研究するべきである。
<フォークランド紛争とサッチャーのリーダーシップ>
英国本土から約1万8,400キロメートルの距離にある英領フォークランド諸島は、1833年から英国の直轄植民地となっている。同諸島は、英国の南大西洋における戦略的拠点として非常に重要な位置を占めている。なぜならパナマ運河が閉鎖された場合、ホーン岬周りのシーレンを維持するための補給基地となるからだ。
一方で、同諸島はアルゼンチン本土から約640キロメートルの距離にある。アルゼンチンも以前からフォークランド諸島の領有権を主張していた。
アルゼンチン軍は1982年4月2日、突如、フォークランド諸島を占領する。当時のアルゼンチンは軍事政権のもとで、極度のインフレと失業により国民生活は圧迫されていた。そこで軍事政権は反体制派の不満の矛先をかわす目的で、フォークランド諸島の領有権問題を利用したのである。
アルゼンチンの活動家が上陸して主権を宣言するなどの事件もたびたび起きており、国民の愛国心を煽るうえでも、フォークランド諸島への侵攻はうってつけであった。
それに対して英国は、ただちにサッチャー首相を議長とする少数大臣による戦時内閣を立ち上げる。最高首脳陣による意志決定のもとで、外交・軍事・経済の各分野の調整を行ない、軍事行動の指針を決定する。
英国はギリギリまでアルゼンチンと外交交渉を行なうも、アルゼンチンが平和的解決に応じないため、同年4月25日、ついに軍事衝突に発展する。英海軍は2隻の空母を含む100隻の艦船、兵2万8,000人を派遣し、さらに商船など民間船を短期間で多数徴用した。
とくに注目したいのは、巨大客船「クィーン・エリザベスⅡ世号」までもを輸送船として徴用し、国家総力戦で戦ったということだ。
サッチャー首相は、最初から最後まで戦時内閣をリードし、強力なリーダーシップを発揮し、フォークランド諸島を奪還するという強い意志を持って戦争指導に当たった。
アルゼンチンは占領したフォークランド諸島を守り抜くという強い意志もなく、陸・海・空軍はバラバラに戦ったため、各個に撃破され、次第に戦意が喪失していく。
その結果、アルゼンチン軍は航空攻撃により英海軍艦艇に損害を与えたものの、英軍の逆上陸を阻止できず、6月14日に降伏し、フォークランド紛争は終結した。
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<プロフィール>
濱口 和久 (はまぐち かずひさ)
昭和43年熊本県菊池市生まれ。防衛大学校材料物性工学科卒業。陸上自衛隊、舛添政治経済研究所、民主党本部幹事長室副部長、栃木市首席政策監などを経て、テイケイ株式会社常務取締役、国際地政学研究所研究員、日本政策研究センター研究員、日本文化チャンネル桜「防人の道 今日の自衛隊」キャスター、拓殖大学客員教授を務める。平成16年3月に竹島に本籍を移す。今年3月31日付でテイケイ株式会社を退職し、日本防災士機構認証研修機関の株式会社防災士研修センター常務取締役に就任した。『思城居(おもしろい)』(東京コラボ)、『祖国を誇りに思う心』(ハーベスト出版)などの著書のほかに、安全保障、領土・領海問題、日本の城郭についての論文多数。5月31日に新刊「だれが日本の領土を守るのか?」(たちばな出版)が発売された。 公式HPはコチラ。
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