<平時における対処計画と危機管理力>
当時、英国はフォークランド諸島、ジブラルタル、香港の3カ所を植民地として経営していた。政府・軍・民間の三者が一体となって、それぞれの有事における「非常時対処計画」を作成し、軍事行動の中心となる海軍が海軍大学で毎年のように図上演習を実施していた。このことが英国の迅速な軍事行動となり、フォークランド諸島の奪還に繋がったと言われている。
ひるがえって日本はどうだろうか。日本には英国のような「非常時対処計画」もなければ、政府・軍(自衛隊)・民間の三者が一体となっての戦時・危機管理の本格的な訓練は、1度も実施されたことがない。
平成22年(2010)9月7日、日本の領海内で発生した尖閣諸島沖での中国漁船衝突事件への菅直人政権(当時)の対応を見るにつけ、危機管理の要諦を理解していない政治家諸氏のお粗末さだけが浮き彫りとなった。
平成23年3月11日に発生した東日本大震災でも、菅首相の対応は、一国のリーダーとしての資質もなければ、覚悟もなかった。安全保障会議を招集するわけでもなく、まったく機能しない対策本部や会議体を多数設置するだけで、災害対策基本法に基づく中央防災会議さえも開こうとしなかった。
阪神・淡路大震災以降に内閣官房に設置された危機管理監を指揮命令系統から排除し、不必要なパフォーマンス(福島原発視察など)や、ひんしゅくを買う発言以外は、執務室に籠って新聞・雑誌を読みふけるだけで、リーダーとしての適切な指示・判断もできなかった。サッチャー首相のリーダーシップと比較すると、天と地ほどの能力の差がある。
<戦う覚悟が必要だ>
日本は、フォークランド紛争から教訓・参考とすべき事項がたくさんあるはずである。決して戦争を奨励しているわけではない。国家は戦う覚悟と意志を持たなければ、いざというときに、守るべきものも守れなくなる。それを教えてくれたのが、フォークランド紛争なのである。
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<プロフィール>
濱口 和久 (はまぐち かずひさ)
昭和43年熊本県菊池市生まれ。防衛大学校材料物性工学科卒業。陸上自衛隊、舛添政治経済研究所、民主党本部幹事長室副部長、栃木市首席政策監などを経て、テイケイ株式会社常務取締役、国際地政学研究所研究員、日本政策研究センター研究員、日本文化チャンネル桜「防人の道 今日の自衛隊」キャスター、拓殖大学客員教授を務める。平成16年3月に竹島に本籍を移す。今年3月31日付でテイケイ株式会社を退職し、日本防災士機構認証研修機関の株式会社防災士研修センター常務取締役に就任した。『思城居(おもしろい)』(東京コラボ)、『祖国を誇りに思う心』(ハーベスト出版)などの著書のほかに、安全保障、領土・領海問題、日本の城郭についての論文多数。5月31日に新刊「だれが日本の領土を守るのか?」(たちばな出版)が発売された。 公式HPはコチラ。
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