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交渉は"若者"が世の中を動かす為の必須スキル!~「武器としての交渉思考」瀧本哲史著(星海社新書)
書評・レビュー
2012年8月21日 07:00

 瀧本氏は前マッキンゼーのコンサルタント。現在はエンジェル投資家で京都大学客員准教授の新進気鋭である。この本は、著者が京都大学で学生に教えている「交渉の授業」を1冊の本に凝縮したものだ。内容はかなり骨太であるが意外と読み易い。瀧本氏は授業で「正解」を教えない。そして、先生が常に正しいことを言っているわけではないという前提がクラス全員に共有されている。

 いわゆる「交渉」に関する本は世の中に溢れている。しかし、どれも若い世代が実践的に活用していく観点からは何の足しにもならない。それは、学者が"交渉術"を語ったり、回想本であったり、翻訳本であったり、果ては評論家や文化人の独りよがりの戯言だからだ。学生に限らず、20代、30前半のビジネスマンにも、本著をお薦めしたい。

 どんなに能力が高くても、どんなに仕事ができても、どんなに揺るぎない決断力や高い志を持っていても自分1人の力では世の中は動かせない。世の中を動かす為には、一緒に戦う「仲間」を探し出す必要がある。そして、彼らを味方にし、時には敵対する相手や、自分たちよりもはるかに巨大な力を持つ「大人」とも「交渉」によって合意を結ぶことが必要だ。

 授業なので、本著はガイダンスを除くと6時間で構成されている。

ガイダンス:なぜ、いま「交渉」について学ぶ必要があるのか?
1時間目:大切なのは「ロマン」と「ソロバン」
2時間目:自分の立場ではなく、相手の「利害」に焦点を当てる
3時間目:「バトナ」は最強の武器
4時間目:「アンカリング」と「譲歩」を使いこなせ
5時間目:「非合理的な人間」とどう向き合うか
6時間目:自分自身の「宿題」をやろう


 瀧本氏は裁判や経営にも「絶対の正解」はないという。どちらにとっても必要なのは、議論を通じて最善解を探し、自分の意見の賛同者を増やしていく姿勢だというのだ。

 全編を通して一貫している著者の気持ちは、読者の中から、実際に行動に移して、現実の世の中を良い方向に動かしていく若者が出現することである。その為には、現実に即して、挫折することなく、成果を上げることが重要だ。

 1時間目の「ロマン」と「ソロバン」では、「良いことを言っているのに世の中に影響を与えることができない」又「理念は立派だけれど、大したことをやっていない」というダメ会社やNPOの例を上げ、若者にとっての「ソロバン」の大切さを力説している。

 バブルが崩壊してこの15年で世の中は大きく変わった。今の日本は、古いタイプの組織が瓦解して、新しい組織やルールを自分たちで作っていく社会に変化していく途次にある。しっかり、地に足をつけて、バラバラに動くことなく、組織化してアクションを起こすことが重要である。

<プロフィール>
三好 老師 (みよしろうし)
 ジャーナリスト、コラムニスト。専門は、社会人教育、学校教育問題。日中文化にも造詣が深く、在日中国人のキャリア事情に精通。日中の新聞、雑誌に執筆、講演、座談会などマルチに活動中。


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