功成り名遂げた延吉正清理事長が花道を退こうというのに、なぜ迷走するのか。ご本人は、理事長の椅子にしがみつこうなどという、どこかの国の"アルバイト総理大臣"のようなさもしい考えを持つ人間ではないことは、誰もが知っている。
それなのに、延吉理事長が6月14日の臨時理事会、同18日の定例理事会・評議員会のいずれでも理事長を退任しなかったのはなぜだろうか。
<「後任が来たら辞める」と延吉理事長>
病院関係者の話から、延吉理事長と病院関係者の話し合いを再現しよう。
病院関係者「延吉先生は辞めるとおっしゃいましたよね」
延吉氏「強制的だったんです」
病院関係者「強制的はないでしょう」「延吉先生みずからの意思でした」
延吉氏「わしは院長も理事長も辞めると言っている。ただ問題は空白を作りたくないから、その空白をつくらないようになれば翌日から辞めます」「いつということは言っていない。後任が来た時点で辞める」
病院関係者「空白とおっしゃいますけど、みんなの前でこの講堂で院長を辞めるとおっしゃった」
延吉氏「次の人が来るまでは辞めない」
病院関係者「理事長と院長を兼務しているシステムに問題があった。まず理事長と院長を退任していただいてから、次を考えましょう」
延吉氏「理事会が退任を承認しないとだめです」
病院関係者「ご自分が辞めるとおっしゃったでしょう」
延吉理事長は「辞める意思はある」と認めながら、「後任が来たら」の一点張りで、話し合いは平行線のままだった。そして、6月7日の最初の退職・退任表明が取り上げられると、延吉氏側が途中で、終了を宣言して退席、一方的に打ち切られたという。
「臨時職員会議」でみずから院長退職を表明したにもかかわらず、「強制された」と言うのも尋常ではない。
<なぜ病院存続へ危機感>
席上では、病院関係者から「先生の功績と病院の存続を守るため」との言葉も飛び出したほどだった。理事会・評議員会が機能不全に陥っていることを懸念する発言や延吉氏の発言が変わることへの危機感も表明されたという。
なぜ病院関係者が「病院存続のため」という危機感を持つのか。相次ぐ医療制度改革や診療報酬改定などの影響でどこの病院経営も厳しいが、小倉記念病院の経営状況の健全さを疑うような事実は何もない。また、"延吉正清院長不在"でも、小倉記念病院の日常業務や患者の治療には支障は生じている様子はまったくうかがえない。
ただ言えるのは、延吉氏の勇退が、同氏自身の功績を守るためであり、病院の利益とも密接に関わっていると病院関係者が考えていることだ。病院関係者がそう思っていること自体が、すでに延吉氏がいつ辞めてもおかしくなかったことを示している。
予定している第2弾以降では、理事長退任・病院長退職を先送りする延吉氏の背後に潜む事情を追うとともに、勇退表明の深層にも迫っていきたい。
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