ネットアイビーニュース

NET-IB NEWSネットアイビーニュース

サイト内検索


カテゴリで選ぶ
コンテンツで選ぶ
会社情報

SNSI中田安彦レポート

ウォルフレンの日本知識人への警告を今こそ噛み締めるべきだ(3)
SNSI中田安彦レポート
2012年8月31日 07:00
2012年8月29日
SNSI(副島国家戦略研究所)研究員 中田 安彦

 ムラというのは閉鎖的な結社・共同体であるから、そのメンバーにとっての合理性は、ムラの存在の継続、つまり、潤沢な資金源である。だから、ムラの存在を脅かすかどうかということが、判断基準であり、その成否にもとづいて結果が補正されるということだ。
 たとえば、原子力でいえば、原子力安全・保安院といった官僚機構は、原子力発電というものを存続させるという合理性で動く。そのためには原発の安全基準もその合理性にもとづいてヌエのように変えることが正当化される。以下の記事は、28日の共同通信のものである。

原発、断層ずれても運転可能に 保安院が新基準導入へ
共同通信(2012年8月27日)

 原発直下に地盤をずらす「断層」があっても原発の運転を一律に禁止せず、継続の可能性を残す新たな安全評価基準の導入を、経済産業省原子力安全・保安院が検討していることが28日、分かった。
 保安院は従来「活断層の真上に原子炉を建ててはならない」との見解を示していた。新基準では、これまでは活断層と判断される可能性があった一部の断層について原発の直下にあっても、ずれの量が小さく原子炉建屋などに影響が生じないと評価されれば原発の運転継続も可能になるとみられる。
 だが「ずれの量の正確な評価手法はまだ完全ではない」(保安院)など課題も多い。

 この記事は、大した根拠もなく、官僚機構がなし崩しに自分たちが決めてきた「耐震基準」を自分たちの都合で撤回している、という事例である。それ以外にも、2030年のエネルギー構成をめぐったパブリックコメントや討論型世論調査の結果を評価する会合では、自分たちが導入を決めた、2つの国民意識調査について、「国民の意識の反映とは必ずしも言えない」としているが、結果が官僚機構のシナリオから外れたからといって、勝手に世論を補正するというのはいかがなものか。一定の機関意見募集が行なわれて自発的に投稿されたパブリックコメントの集計結果が信頼性に欠けるという官僚側の論理は、「選挙で多数得票を得たとしてもその結果だけで当選者を決める訳にはいかない」と言っているのと同じ暴論である。

 さらに、関西電力の電力需給についても、飯田哲也氏といった学者たちが、「この夏の電力需給は再稼働なしでもまかなえる可能性がある」と指摘したのに、さんざん「電力不足論」を煽りたて、結果的に関電の広報部が今(29日「東京新聞」朝刊)になって、「現時点では原発がなくても供給力は維持できた」と認めると、それは「結果論だ。結果論でものをいう反原発派は信頼できない」という議論が主に原子力を擁護する論陣を張っていた識者から出てくる。

(つづく)

≪ (2) | (4) ≫

<プロフィール>
中田 安彦 氏中田 安彦 (なかた やすひこ)
1976年、新潟県出身。早稲田大学社会科学部卒業後、大手新聞社で記者として勤務。現在は、副島国家戦略研究所(SNSI)で研究員として活動。主な研究テーマは、欧米企業・金融史、主な著書に「ジャパン・ハンドラーズ」「世界を動かす人脈」「プロパガンダ教本:こんなにチョろい大衆の騙し方」などがある。


※記事へのご意見はこちら

SNSI中田安彦レポート一覧
SNSI中田安彦レポート
2012年7月12日 07:00
SNSI中田安彦レポート
2012年7月11日 07:00
SNSI中田安彦レポート
2012年7月10日 15:41
SNSI中田安彦レポート
2012年4月25日 07:00
SNSI中田安彦レポート
2012年4月24日 10:14
NET-IB NEWS メールマガジン 登録・解除
純広告用レクタングル

2012年流通特集号
純広告VT
純広告VT
純広告VT

IMPACT用レクタングル


MicroAdT用レクタングル