病院関係者によると、奇妙な理事会招集通知があるという。
「臨時理事会招集御通知」と題した書面で、6月14日に小倉駅北口にあるRホテルで臨時理事会を開くというもの。通知の日付は6月6日付で、招集者は「財団法人平成紫川会 理事長 延吉正清」と記名され、理事長印が押印されている。
議案は、次期病院長の推薦などとされているから、この時点で延吉氏が病院長退職を決断していたことは明らかだ。
<顧問でも財団事務局でもないのに...>
奇妙なのは、欠席の場合の委任状の送り先だ。「顧問弁護士清原雅彦宛」となっている。
小倉記念病院を開設するのは、財団法人平成紫川会であり、病院関係者によると、清原弁護士は財団法人の顧問弁護士ではない。清原弁護士は、延吉氏個人の依頼を受けた代理人に過ぎない。
しかも、財団法人には事務局が設置されており、事務局長ら職員も配置されている。通常であれば、出欠の返事や委任状の送り先は事務局である。当然だが、事務局は小倉記念病院にあり、清原弁護士の法律事務所に置かれているわけではない。
清原弁護士は、2004年、弁護士6人で結成された大手町法律事務所を経て、現在「弁護士法人リベラ」の代表社員弁護士である。日本弁護士会理事、福岡県弁護士会副会長、九州弁護士連合会理事長などを歴任した重鎮だ。カネミ油症被害者救済法が8月29日に成立したが、原因企業カネミ倉庫の代理人を務めたことでも知られる。
また、福岡県教育委員長や北九州市人権委員会委員長、社会福祉法人理事、北九州市立大学監事などを務め、「旭日小綬章」受章。趣味の音楽では北九州交響楽団名誉団長でもある。
<中止と開催 2つの理事会通知>
6月14日の臨時理事会をめぐる"奇怪さ"は、ほかにもまだある。
理事長名で臨時理事会中止の通知がいったん出された後、6月11日付で"中止ではなく、予定通り開催する"とする通知が出されているのだ。
しかも、6月11日付通知には延吉氏の署名はあるが、理事長印も延吉氏個人の印鑑も何も捺印されていず、代わって「(文責)弁護士 清原雅彦」と記名され、弁護士の職印が押印されている。
文面には、清原弁護士が、財団法人からにしろ、延吉氏個人からにしろ、委任を受けたとの内容はまったく記されていなかったというのだ。それが事実だとすれば、どのような権限と責任を持つのかなんら明らかにしていず、およそ弁護士らしからぬ書面である。
かといって、"(文責)清原"とあるから、起案した文章を延吉氏が最終的に承認し、延吉氏本人の責任で出した文章でもないようだ。延吉氏に文面の確認を得る暇もないほど、よほどあわてて作成したのだろうか。
<病院外で繰り返される"理事会">
病院関係者によると、「理事と財団の関係は委任関係であり、委任関係の終了は相手方の承諾を必要としない。辞任の意思表示をした時点で理事を辞めている。理事を辞めれば、理事長でないことは明らかだ」と指摘する。
民法は、委任契約の解除について、いずれか一方から自由に解除できると定めている。財団法人平成紫川会の『寄附行為』(組織運営を定めた規則)にも、理事の退任について理事会の承認要件はない。
したがって、臨時理事会がいったん中止になった後、6月11日には延吉氏には理事会の招集権限はなく、"中止ではなく開催する"とする権限もないため、臨時理事会そのものが適法に成立していず、無効だということになる。
さらには、7月20日、8月16日にも理事会なる会合が招集されていることがわかった。延吉理事長名の招集通知には、理事長印が押印されていず、会場も病院ではなく、「弁護士法人リベラ会議室」と指定されていたという。
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