財団法人平成紫川会小倉記念病院の運営をめぐって、8月末に2つの大きな動きが起きた。
<混乱防止へ法的手段>
財団法人執行部が、延吉正清氏が理事・理事長・病院長を辞任したことの確認を求める仮処分を福岡地裁小倉支部に申し立てたことが、9月3日わかった。申し立ては8月29日付。
延吉正清氏が理事長・病院長を辞任した後、理事長職を代行しているのは常務理事になる。ところが、延吉氏は理事長名を使い、理事会や評議員会なる会合を開催するなど病院外からの活動を繰り返している。財団法人の運営を混乱から防ぐため、法的手続きに訴えたものとみられる。
<延吉派、"新理事選任のクーデター">
一方、延吉氏は9月3日、取材に対し、「ぼくは(理事長を)退任していない。評議員会を開き、新しい理事を選んだ」と述べた。8月30日、北九州市小倉北区のホテルで、評議員会を開催し、新理事8人を選任したというのだ。
延吉氏が病院関係者に出した「お知らせ」によると、任期が6月30日で満了していた理事に代わり、新理事を選任したとある。次の段階で、理事会を近日中に開催して、任期が満了している評議員に代わる新評議員を選任し、新体制を定めるとしている。
財団法人の組織運営を定めた「寄付行為」によると、理事・評議員の任期は2年間で、2年前の7月1日に選任されているが、公益法人改革にからみ、新法人への移行をにらんで「現行法人解散まで」の任期としていた。まだ現財団法人は解散していないし、仮に2年の任期が満了していたとしても、「寄付行為」では任期満了後も職務義務が定められているので、選任を急ぐ必要性はない。
現理事会6人のうち、「延吉派」は延吉氏を含めても3名で、理事会を招集しても成立しない事態に業を煮やして、理事を入れ替える"クーデター的な荒業"に打って出たとみることができる。
<招集も選任も無効>
これに対し、病院関係者は「評議員会の招集権限は理事長にあるが、延吉氏は6月7日に理事を辞めていて、理事長ではない。評議員会招集そのものが無効であり、新理事選任も無効だ」と指摘する。
いわば、財団法人の運営をめぐって「内紛」が起きているのではなく、財団法人・病院外からの"クーデター"のようなものというわけだ。
"アラブの春"など民主化が大きなうねりとなっているが、軍事独裁国家を思い浮かべるとよいだろう。民主化運動との内紛の末に独裁者が国を追われてなお、国外から"新政府"を樹立して「われこそ国権の継承者」と言い張って、国内の民主化をつぶそうと介入を続ける事態にダブるのではないか。
また、仮処分申し立てが裁判所に認められれば、評議員会招集も、新理事選任も無効となる可能性は大きい。
混乱の火に油を注ぐのか、あるいは火中に栗を拾うのか、いずれにしても、8人の"新理事"の勇気ある行動には恐れ入る。
延吉派が選んだ新理事は、以下のとおりである。(敬称略)
延吉正清、三原晴正(苅田商工会議所会頭)、坂田隆造(京都大学大学院医学研究科教授)、森山寧慈(前TOTO副社長)、下川辺正行(戸畑共立病院院長)、松股孝(八幡病院病院長)、南本久精(元北九州市病院局長)、清原雅彦(弁護士)。
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