「延吉派」が選んだ小倉記念病院の"新理事"には、延吉正清氏本人以外に現理事は一人しか重任されていない。また、辞任直前から登場してきた清原雅彦弁護士が、延吉氏の代理人ではなく、理事に"昇格"した。
理事の総入れ替えという苦肉の策に出たのは、正常化を求め延吉氏になびかない理事が出てきたためだと思われる。それは、こういう事情があるからだ。
病院関係者によると、元々、現理事会は、延吉氏が担当し命を救った患者など関係の深いメンバーが多く含まれている。理事のなかから延吉氏に付かず、病院側に立つ者が出てくるとは、延吉氏にとって思いもよらないことだっただろう。延吉氏や清原弁護士も、少なくとも6月中旬までは、現役員の任期は「2013年秋、新法人移行まで」と申し合わせていたという。すると、急に「6月末任期切れ」と言い出したことになる。
<混乱の沈静化が先決>
延吉正清氏は、取材に対し、「後任がくればぼくは辞めます」と述べ、あらためて後継者へのこだわりをみせた。
一方、病院を開設する財団法人平成紫川会の理事会などの混乱が沈静化しないと、後任の引き受け手もすぐには来れないだろうと、病院関係者の見方は一致している。理事会の正常化が先決というわけだ。
辞任を決めた延吉氏が、理事を退かず、後継者や新体制づくりにこだわるのはなぜか。
当初から、延吉氏が後継者を決めて辞任したかったことは、6月に次期病院長の推薦依頼を議題にした理事会を招集したことからも明らかだ。
しかし、延吉氏の求心力が失われて辞任に追い込まれた以上、事態は変わっている。辞任の署名は強制的だったと言って、辞任を撤回をしてみても始まらない。
誰もが円満解決を望んできた。ある病院関係者は「きれいに辞めさせてあげたい。勇退が一番よかったが...」として、こう話す。
「無理やり書かされたというのはありえない。一人の人間として判断して書いたんだから、間違いない。先に後任をみつけてから辞めるというのが普通だが、今回、もうやむを得ない」
<「言うことを聞く人、絶対にない」>
別の病院関係者は、「延吉に加勢して言うてるんじゃない」と前置きして、「延吉は、後に代わる人を置きたいというのが願いなんです」と語った。
「延吉も欠点がある。(病院が)あれだけ大きくなったのは自分一人で(やった)と。医者の技術がないと駄目だというのがあの人の考えだ。名医だから患者が来る。延吉が自分に代わる人、自分と同じか自分より腕のいい人を連れてくる」と述べ、こう断言した。
「自分の言うことを聞く人を連れてくるというのは絶対にない。約束だ」。
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