「自分の言うことを聞く人を連れてくるのではない」。延吉正清氏に近い病院関係者によると、それが、延吉氏の「約束」だという。
後任は延吉氏の"操り人形"ではないし、"院政"を敷くつもりもないと批判をかわす狙いが見える。
<延吉氏、約束反故を繰り返す>
その「約束」が事実かどうかは別として、"神の手"を持つ心臓内科医、延吉正清氏の言動はこれまで二転三転を繰り返されている。
「本人が辞めると言ったのに、撤回したり、院長は辞めるけど理事はやると言い出したり、ころころ変わる。円満に道をつくろうと、本人と話し合って決めても、翌日には変わる」
勇退の形をつくるため仲裁の骨を折った別の関係者は、こう語った。何回も約束を反故にされて、憤懣やるかたない思いを抑えきれない。
<次期病院長推薦依頼を決議?>
延吉氏の後継指名の動きは、遅くとも6月初旬には始まっていた。
次期病院長の推薦を京都大学の湊長博医学部長に依頼すると、6月14日の臨時理事会に提案する予定だった。京都大学医学部は、延吉氏の出身大学である。
延吉氏側が作成した議事録には、提案が承認され、推薦依頼の次期と方法は延吉氏に一任することになった、とされている。その議事録が、6月18日の定例理事会で読み上げられると、その内容に病院関係者はあ然とした。14日の臨時理事会はそのような決定ができた会合ではなかったからだ。
病院関係者によると、▽多数決による賛否が確認されていない▽決定事項はない▽議事紛糾で自然流会した――という状況だったとして、推薦依頼の決議は無効だという。
とはいえ、議事録まで作成して、推薦依頼を決議したと正当性を主張したくらいだから、延吉氏は自らの提案どおり、湊医学部長に依頼したはずである。
事実を確かめるために、京都大学医学部に取材を申し込んだ。広報担当者からは、湊医学部長の話として、「京都大学が公式に関与する立場ではないことから、取材は遠慮させていただく」との回答があった。
<「秘密保持」の密室懇談会>
次期理事長となるのがほぼ確実な次期病院長の推薦を、公益法人が京都大学医学部長に依頼するというのは異例だが、それは表向きだけの話で、実際には密室で次期病院長を決める策動が見え隠れする。
その舞台が、延吉氏らが「弁護士法人リベラ会議室」などで繰り返し開いている「理事評議員懇談会」なる会合だ。
会場がなぜ「リベラ会議室」なのか。第1回を開催した際に延吉氏側自身が目的を明らかにしていることがわかった。病院関係者によると、「秘密保持のため」とはっきり示されていたというのだ。
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