「住宅公社は、住宅開発のコーディネーターとしての役割を担っていますが、事業推進にはやはり、プロジェクト型の視点と言いますか、そういった民間企業的な発想を持たないと解決は難しいかなと感じています。アイランドシティの場合、交通機関などインフラの整備がまだまだ足りませんし、まちづくりという意味でも大胆なプランが存在するわけではありません。土地を売却したり貸すことはもちろん大事ですが、その前提として、まちづくりのビジョンや方向性を明確にし、具体的な方策を講ずるなかで、その土地の価値を高めていく必要があると感じています」と同氏は言う。
つまりは、人気がない場所に対して投資するとなると、予算を割くのが難しくなってしまうところだが、その逆の発想が必要ということだ。
土地の人気を高めるために投資をし、適正な価格で販売する。アイランドシティに必要なのは、「投資としての決断力」。どのような生き生きとしたプランを打ち出せるか、それが市民に愛されるアイランドシティとなるのか、それとも「人工島問題」が長引くのか。これからの取り組みによっては、重要な分かれ目になるだろう。
話を戻すと、やはり、市営住宅の世界でも決断が迫られている場面は多い。「もちろん、住宅機器はどんどん新しいものが導入され、人々の暮らしは便利になっています。また、太陽光発電等の自家発電やLED照明など、便利さだけではなく省エネルギーなどに役立つ設備も最近では目立ちますし、市営住宅にも変革が必要な時期が来ていると感じています」(瀧口氏)。
オール電化に自家発電設備、屋内乾燥室など、考えれば枚挙にいとまがないほど住宅機器は多様化しつつある。しかし、それらが便利で人気があるからといって、おいそれと導入するわけにはいかない台所事情もあるだろうし、通例や慣習もある。「お風呂が良い例だと思います」と瀧口氏。「かつて、市営住宅のお風呂には浴槽や風呂釜がありませんでした。ある程度の年齢の人はその時代を覚えていらっしゃるかもしれません。そのため入居者が自費で設置するしかありませんでした。しかし、時代の流れとともに市営住宅としても設置するのが当たり前になったのです。このように、時代の流行を追いかけることは市営住宅ではできませんが、一般に普及し、いわゆる市民権を得たものは導入しやすいということです。具体的に言えば、今、流行りのLED照明などはまだまだ一般家庭に普及しているとは言えません。関心の高い家庭のみが導入している段階と言えるでしょう。しかし、たとえば家庭菜園などのガーデニングは、市民権を得ていると思います。こういったものは比較的導入しやすい部類にあるのではと思います」。
住宅が、その基本である住むこと以上に、豊かな生活を送るための空間として求められる今、市営住宅もそのかたちを変えようとしている、筆者は取材するなかでそう感じることが多々あった。箱さえあれば良し、賃料が安ければ良し、それだけではいけない時代が迫っている。「先ほど、ガーデニングを引き合いに出したのは、市営住宅は民間の賃貸住宅に比べて空間的な広さに余裕があるから、という理由もあります。たとえば集合住宅のなかに、菜園などを設けて、周辺住民とも交流しながら豊かな生活を送る。こんな住まいだったら、生活の幅も広がっていきますし、地域コミュニテイの活性化にもつながっていくかもしれません」(瀧口氏)。
約3万2,000戸の市営住宅を、限られた予算のなかで画期的に再生できるアイディア。それがいまこそ求められていて、そこにビジネスチャンスも生まれようとしている。
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