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【流通】トライアルに上場する資格はあるのか?(2)
流通
2012年9月10日 11:00

<2010年、万引き客への恐喝事件>
TRIAL.jpg デフレ経済の象徴とも言える激安ディスカウントストア事業を確立させ、時代に合った事業運営を行ない、成長著しい同社。今年6月、永田社長が会長へ、楢木野副社長が社長へ就任する人事が発表され、組織が大きく変わりつつある。トップの権限、責任の分散により、今後、内部管理体制も確立されていくだろう。

 振り返れば、同社は従業員が過去に万引き客への恐喝事件を起こしている。2年前の2010年4月、岡山県倉敷市のトライアル倉敷店の店長、副店長、警備会社の職員の3名が万引きした客を恐喝した容疑で逮捕され、本社が岡山県警に家宅捜索される事件があった。ユニークな経営戦略で業績を急速に伸ばしている半面、内部に多くの問題を抱えていることを浮き彫りにした出来事であった。「安さ」と「利益の追求」が最優先され、コンプライアンス(法令順守)や従業員教育が後回しになっていたことは否めない。

 当時、同社のホームページには事件の舞台となった倉敷店の店舗が万引き被害の大きな店舗で、同規模の店舗の中でも売上高に対する万引きの損失率が最も高く、全店舗の平均の倍近くあったとの同社の釈明文が掲載されていた。あわせて同社は、年間5億円もの警備費用を投じ、年間8億円から10億円近い万引き被害を受けていることを公表した。事件発生の直前の期にあたる2009年3月期の最終利益(当期純利益)が4億1,800万円であることを考えれば、最終利益の3倍以上を万引き被害とその対策に使われていることになる。この額は異常であり、小売業界の中では同社に対する同情の声も多かった。しかし、弁償金を請求するのは違法ではないにしても、過去の分まで含めて100万円単位の金額を要求する恐喝事件につながった。

 岡山県警による本社の家宅捜索があった翌日、弊社の記者は福岡県内の新宮店に訪れてみたが、事件の説明及びお詫びする張り紙は一つもなかった。事件後しばらくしてこの倉敷店の事件の釈明文は同社のホームページから削除されていた。取引先や消費者の中にはその後の顛末を知りたい声があるが、現在のところ、ホームページ上での続報はない。する必要のないと言われればそれまでだが、上場企業ともなればそういう訳にはいかない。

(つづく)
【矢野 寛之】

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