"神の手"を持つ天才ドクター、延吉正清氏が選任したという新理事による理事会がきょう9月12日開催されるという。小倉記念病院を開設する財団法人から無効だと指摘されながら、「延吉丸」は"船出"を強行する。
<「新理事就任予定ない」>
新理事に取材を申し込んだところ、何人かからすでに回答が得られた。
済生会八幡総合病院の松股孝病院長は、小倉記念病院の理事就任について「全然予定はありません」とコメントし、明確に否定した。
また、北九州市芸術文化振興財団理事長の南本久精氏(元北九州市病院局長)は財団庶務課を通じて、「知人から依頼された」と明らかにしたものの、「取材自体を辞退したい」と、理事就任について明言を避けた。出席するかが注目される。
これまで、理事の選任にあたっては「就任承諾書」に署名捺印してきた。ところが、今回、「延吉派」が選任したという当事者が理事を引き受けた覚えはないという。
理事長を辞任した延吉氏は「理事を辞めるには理事会の承認がいる」と言い張っているが、今度は「理事選任には本人の承認はいらないの」とでも言い訳するのだろうか。
<「返済責任ない」 清原弁護士が通知>
北九州経済界に、8月末から9月初め、小倉記念病院への銀行融資をめぐって怪情報が流れた。
小倉記念病院が北九州銀行から借り入れた40億円の融資を返済する責任がないという通知を同銀行に送りつけたというのだ。銀行があわてて病院に問い合わせたという。
怪情報を探るうちに、延吉正清氏の委任を受けた清原雅彦弁護士が通知書を出したことがわかった。「財団法人平成紫川会理事長延吉氏正清代理人」と書かれ、理事長が融資を承認していないので財団法人として返済責任がないと通知する文面だったという。
小倉記念病院に取材を申し込むと、「約定どおり返済する予定です」との回答だった。
理事らによれば、社会保険病院としての経営委託が終了し、社会保険病院を国から財団に譲渡された形になるため、国に資産約44億円を返納するために銀行融資を受けることを今年の3月理事会で延吉理事長(当時)も含め、承認している。
今回の清原弁護士の通知書は、常軌を逸しているし、通用しない理屈だ。
このような通知書1枚で返済義務がなくなるなら、日本中の会社の社長が「おれは承認していなかった」と言って、銀行借り入れを踏み倒せるだろう。もっとも、そんなことをした会社には、二度とニューマネーがこなくなり、資金ショートするのが関の山だが。
<銀行との信頼壊す恐れ>
北九州銀行は、100万人都市・北九州市に本店を構える銀行として、2011年10月にスタートしたばかりだ。山口銀行から分割設立した銀行で、山口フィナンシャルグループ傘下。北九州市にとって約80年ぶりの地場銀行誕生であり、経済界の期待も強い。銀行側は迅速な意思決定で地域密着金融を掲げ、新規営業先のひとつに、病院があげられているという。経済界も取引先の拡大をバックアップしている。
財団法人平成紫川会の理事にも、経済界の重鎮が2人いる。第一交通産業(株)会長の黒土始氏と、苅田商工会議所会頭で三原グループ(株)社長の三原晴正氏である。三原グループ(株)のメーンバンクは山口FGだ。
小倉記念病院が北九州銀行からの融資を返済しないとなれば、三原社長らの顔をつぶして、三原グループと銀行の信頼関係も壊しかねない。そんな通知を送ることを思いつくとは、とても正気の沙汰とは思えない。
いかに恩義のある人でも愛想を尽かして当然だ。"船出"しようとする「延吉丸」が港を離れる前に船を降りるのが賢明であろう。
【特別取材班】
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