「どんな下着をはいているかを知りたかった」 これは8月下旬に盗撮容疑で警視庁が書類送検し常習性も疑われている大歳卓麻容疑者の弁である。大歳卓麻容疑者は、元IBM社長、会長を歴任し書類送検直前まで、三菱フィナンシャル・グループ、明治安田生命、TOTO、花王、カルビー等数社の取締役をしていた。2003年以降しばらくは、被害者にとっては、冗談の様な話だが、経団連の倫理委員会の委員長を務めている。
6月中旬には27歳の弁護士が高田馬場付近を走行中のJR社内で、20代の専門学校生の女性のスカート内にカメラ付きの携帯を入れ逮捕された。
大新聞など大メディアは、国民の生死に関わる首相官邸前の大飯原発再稼働反対の10万人デモは知らん顔でまったく報道をしない。しかし、AKB48の前田敦子卒業の馬鹿騒ぎを民放はともかくNHKまで放送する。
その大新聞などが最近毎日の様に報じて いるのが 、民主党、自民党の総裁選び、総選挙である。しかし、その記事のなかには「国益」とか「国民のために」という言葉がどこを探してもまったく見当たらない。どこかおかしい。
著者は、「今の世の中というか社会というか世界というか、そういうもののありかたがよくわかりません」という。さらに、「よく分からない」と思っているのは自分だけではないはずだと付け加える。そして、「今はなんとかなっているからいいけれど、この先はどうするの?」と警鐘を鳴らす。
橋本治氏は今から30年以上前に「とめてくれるなおっかさん 背中の銀杏が泣いている 男東大どこへ行く」という東大駒場祭ポスターの名物コピーで鮮烈なデビューを飾った人物である。その後、イラストレイターを経て文筆業に転じている。第9回新潮学芸賞、第1回小林秀雄賞、第18回柴田錬三郎賞、毎日出版文化賞等を受賞。第6回より「小林秀雄賞」の審査員を務める本格派の文人である。
同書は、全体で九つの章に分けられ、それぞれが著者独特な感性で描かれている。「テレビの未来」に始まり、「民主主義の未来」まで、危険で過激な知の冒険が楽しめる。「シャッター商店街と結婚の未来」の章、「男の未来と女の未来」の章は特にユニークで面白い。
「歴史の未来」の章では「歴史は何度も書き換えられます。歴史のゴールは、その歴史の書かれる"現在 "で、歴史というものは、その時の支配者が自分の正統性を確認するために書かせるものである 」と述べている。至言である。
困った時代だ。著者の言葉を借りると「充電したいけど、どこにその電源があるのか分からない」世界情勢も日本情勢も歴史では前例のないところへ行ってしまっている。政治家や経済人が自分だけのことを考えるようになり、"パブリック"のことを考えるものがいなくなってしまったこともその現象に拍車をかけている。
<プロフィール>
三好 老師 (みよしろうし)
ジャーナリスト、コラムニスト。専門は、社会人教育、学校教育問題。日中文化にも造詣が深く、在日中国人のキャリア事情に精通。日中の新聞、雑誌に執筆、講演、座談会などマルチに活動中。
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