「維新銀行 第一部 夜明け前」のあらすじ(2)
その後、谷本は専務に昇格し、植木頭取より営業本部長に任命されたものの、多額の不良債権を発生させた責任を問われ退任を迫られる危機に見舞われる。が、何とか切り抜けて首都圏本部長となり、再起を図る日々を送ることになった。谷本と一蓮托生の山上正代にとっても、谷本が失脚すれば維新銀行を利用した営業活動が出来なくなり、まさに死活問題であった。
谷本の再起にはポケットマネーによる多額の飲食費が必要であった。谷本の復活を願う山上は谷本の窮状を察し資金援助を申し出た。その資金援助を活用して、谷本は次第に維新銀行内での影響力を盛り返していった。
谷本は首都圏本部長となった2年後の役員改選を無事乗り切ることが出来たが、その翌年前立腺がんを患った植木は若い後継者の育成を掲げ、谷本に2度目の退任を迫ってきた。
この事態を受けて谷本は植木頭取に反旗を翻すことを決意。今まで培った組合出身の役員を糾合し、取締役15名の過半数に当たる8名を自陣に取り込むことに成功。
植木頭取の腹心である笹川常務を東京に呼び、任期途中の退任を拒否すると共に、谷本を植木頭取の後継に指名するように逆に提案し、もしそれが認められなければ、取締役会議で植木頭取罷免のクーデターを起こすことも辞さないとの考えを仄めかした。
これに驚いた笹川常務は今後の対応策を協議するため植木の自宅を訪問。谷本のクーデター計画を聞いた植木は自身の不徳を恥じ、徹底抗戦することなく谷本を後継に指名し、谷本のクーデター計画は未遂に終わることになった。
対外的には植木が代表取締役会長となり、筆頭専務の谷本に代表取締役頭取を禅譲するという順当な役員人事を演出したが、もし植木が本気で谷本のクーデター計画を潰しにかければ、むしろ谷本のクーデター計画は失敗する可能性の方が高かったと言える。
しかしあえて維新銀行の結束を図ることを優先し、谷本を後継の頭取に指名した植木の決断が、後に展開する「谷野頭取罷免」の悲劇を生むことになる。
植木は会長就任から3年後、前立腺がんが肝臓に転移し不帰の人となり、植木会長と谷本頭取との骨肉を争う闘いは終止符を打った。
植木会長の死を境に、維新銀行は谷本頭取を頂点として、谷本が育てた組合出身の役員と維新銀行を舞台にわがもの顔で保険勧誘をする第五生命の山上正代とのトライアングルによって、完全に私物化された銀行になっていった。
明日からは「維新銀行 第二部 払暁」に主に登場する人物および頭取交代劇を影で演出した人物について触れることにします。
※この作品はフィクションであり、登場する企業、団体、人物設定等については特定したものでありません。
▼関連リンク
・「維新銀行」~第一部 夜明け前(1)
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