<国際司法裁判所(ICJ)への提訴>
日本政府は8月21日、李大統領の竹島への不法上陸を受けて、竹島の領有権について国際司法裁判所(ICJ)に付託するよう韓国政府に正式に提案した。しかし、「領土問題は存在しない」という立場から、韓国政府は付託を拒否することを決定した。
日本政府は過去、1954年(昭和29年)、昭和37年の2度にわたりICJに付託したが、いずれも韓国政府は同意していない。今回、日本政府は、韓国政府が付託を拒否した場合でも、単独で提訴することで、国際社会に竹島問題の存在をアピールする狙いがあるとしている。
<日本がICJで勝てる保障はない>
今後も韓国政府が付託に同意する可能性は低いと思われるなか、2008年5月、マレーシアとシンガポールが領有権を主張していたペドラ・ブランカ島の帰属問題を巡るICJの判例を紹介しておきたい。
ペドラ・ブランカ島の領有権は、そもそもマレーシアが主張していた。しかし、シンガポールは130年前から同島のホースバー灯台を管理しており、それに対してマレーシアは何の申し立てもしていなかった。このため暗黙のうちに領有権が移転したと、シンガポールは主張していた。
ICJは最終的に「1980年までにペドラ・ブランカ島の領有権はシンガポールに移転されていたとみなし、同国に帰属する」とする判断を下した。
ICJの判断は、誰の目にも明らかな条約に基づかない限り、「発見」や「歴史(文献を含む)」に由来する主権は退けられ、「長期にわたる」継続的な実効支配や統治、管理の証拠の積み上げが重視されることを意味する。
不法占拠しているといえども、何事もなく半世紀から1世紀の間、実効支配すれば自国領土になるということをICJが示したのである。
この判例に従えば、竹島は韓国の領土となり、北方領土はロシアの領土になってしまうことにもなる。
仮に将来、韓国政府が付託に同意して、ICJが「竹島は日本領土」と認定したとしても、判決に強制力も罰則もないため、韓国が竹島を日本に返還するとは到底思えない。
昭和40年の日韓基本条約締結の際、竹島の領有権問題は、「外交上の経路を通じて解決を図り、これにより解決できない場合には、両国政府が合意する手続きに従い、調停による解決を図るものとする」と規定され、解決が先送りされた。
このとき先送りせず、日本政府が竹島の領有を最後まで主張し解決を図っていれば、現在のような韓国による不法占拠が続くような状態にはなっていなかっただろう。
現在、米国は竹島問題に介入する気は一切ないが、戦後の日韓関係を考えるうえで、竹島問題は米国にも責任の一端がある。ICJよりも米国を第3者機関とする調停役として解決を図ることを、日本政府は真剣に検討するべきである。
そのためにも民主党政権誕生後の日米関係のギクシャクを早急に解消する必要があることは論を待たない。
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<プロフィール>
濱口 和久 (はまぐち かずひさ)
昭和43年熊本県菊池市生まれ。防衛大学校材料物性工学科卒業。陸上自衛隊、舛添政治経済研究所、民主党本部幹事長室副部長、栃木市首席政策監などを経て、テイケイ株式会社常務取締役、国際地政学研究所研究員、日本政策研究センター研究員、日本文化チャンネル桜「防人の道 今日の自衛隊」キャスター、拓殖大学客員教授を務める。平成16年3月に竹島に本籍を移す。今年3月31日付でテイケイ株式会社を退職し、日本防災士機構認証研修機関の株式会社防災士研修センター常務取締役に就任した。『思城居(おもしろい)』(東京コラボ)、『祖国を誇りに思う心』(ハーベスト出版)などの著書のほかに、安全保障、領土・領海問題、日本の城郭についての論文多数。5月31日に新刊「だれが日本の領土を守るのか?」(たちばな出版)が発売された。 公式HPはコチラ。
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