2011年8月31日、女子生徒は家族とともに1日を過ごした。午前中は祖母と美容室に行き、昼食は、家族5人でそうめん流しへ食事に行った。祖父母は、少女が寝床につくまで変わった様子がなかったという。それ故、少女の死は突然のことのように思え、その真相を切に知りたがっている。
女子生徒の祖父・中村幹年さんによると、アンケートに関して、今年4月に転勤した当時の校長は、遺族に結果を見せることを約束していた。学校長や他の先生から、少女へのいじめがあっていたとの話があったという。非開示に納得がいかない幹年さんは、同じ内容のアンケートを独自に実施。同じ学校へ子どもが通う家庭を訪ね、協力を求めた。そして、返ってきたアンケートには、女子生徒へのいじめに関する内容が書かれてあった。
女子生徒の遺族はアンケートの開示を求めるための署名運動を行なった。今年(12年)8月9日、市教委に賛同した3,824名の署名とともに開示を求めた。しかし、出水市教育委員会(以下、市教委)の教育長は、署名に触れることなく、開示しない旨を伝えた。真相解明への強い願いがかたちになった署名を見もしないというのは、あまりにも冷たい対応ではないだろうか。そして、署名を持参した幹年さんの怒りは側にあった机にふり降ろされた。
多くの人から寄せられた想いが踏みにじられた。女子生徒の年子で、同じ中学校に通う弟は「お姉ちゃんのため」と、署名活動を手伝ったという。そのことを幹年さんは涙ながらに語った。教育長の冷酷な対応ばかりではない。それまで幹年さんには伝聞も含めて、信じられないような教育サイドの実態が耳に入っていた。
アンケートを開示しないことの理由は、回答に伝聞や女子生徒の遺族のことに触れている内容があること。しかし、女子生徒の遺族にとっては、愛する家族の自殺が原因不明のままであることのほうがよほど残酷だ。さらに市教委は、自殺が「子宮頸がんワクチン接種の影響」といった心ない言葉のほか、「家族の問題」とまで言及したという。いかなる言い分があろうとも、遺族への配慮が足りないことは否定できない。
教育の現場に問題がなかったとする市教委だが、アンケートの開示を幹年さんに約束していた校長だけでなく、女子生徒が所属していた部活の顧問の教員も今年4月に転勤した。いじめは部活内であったという話があり、それらしき事象に関して、市教委の調査報告書は顧問の教員が都度対処していたと記述されている。しかし現在、当時の女子生徒の周辺状況について責任がある人間は学校にいない。遺族がやり取りをしているのは、当時の状況を直接知らない市教委の人間である。
さらに、他の学校の教員から幹年さんや遺族にとって信じられない話が伝わってきた。女子生徒が亡くなった11年9月1日の10日後の11日に行なわれた体育祭後の打ち上げとして、中学校の教員による飲み会が開かれていたというのだ。
遺族に対する出水市教育委員会の"いじめ"が公然と行なわれている。
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