<打ち出された新たな方針は...>
9月12日と13日、さとうベネックは大分および東京で債権者説明会を実施した。8月30日の説明会は私的再建の決意表明と関係各社へのお願いであったが、その後の事態の進展を受けて、今回は民事再生法の適用申請に関する内容となった。
概要であるが、6月末日時点の財務状況として、資産約50億7,000万円に対して、負債は約44億3,000万円。債務超過ではないものの、資産の大部分は完成工事未収金や未成工事支出金とされた。
この点、未成工事支出金は、請負工事によって生じた未完成の工事原価を示すもの。工事を完成させなければ大幅に目減りすることもあり得るため、債務超過の危険を内包する状況と言えよう。
そのため、民生法下で工事の続行と完成ができる方向性、いわゆる「再建型」の方針が示された。スポンサーを選定することで資力を高め、新代表もスポンサーから派遣してもらう予定とのこと。これに関連して、代表の大川氏からは辞任届けが出されており、弁護士預かりになっているとされる。再開時期に関しては「9月中もあり得る」との踏み込んだ発言がなされた。
この点、新スポンサーは金融機関ではない企業を探しているという。いまだ選定中にもかかわらず「9月中」にも再開するというのであれば、2通りのケースが考えられる。
1つは、スポンサーの決定間近、あるいは一部決定済みであるが複数のスポンサーを探している場合。もう1つは、当面、自前で資金調達を行ないながら工事を続行し、並行してスポンサーを探す場合である。恐らくは後者のケースであると考えられ、当面の資金繰りに関して、手形の回収や不動産の売却で1億円を調達するとの方針も示された。8月末時点のキャッシュ不足が約6.2億円であったことに照らせば、かなり少額であるが、民生法の適用申請時に一度リセットされているため、このような額になったものと考えられる。
また、従業員の状況についても報告があり、説明会の時点で全従業員の7割が辞意を表明しているとされた。大川代表の経営方針に対する不満が原因とされるが、大川氏が退くことでこれが解消されるかについては不透明だ。
説明会の内容に加えて周辺取材の結果もつき合わせると、監督委員らは同社の規模を大幅に縮小して、一地域の地場ゼネコンとして生き残りを図らせたいのではないかと考えられる。完工高だけが建設業者の評価を決める尺度ではないが、果たしてそれが「さとうべネック」と言えるのであろうか。先々週に催された債権者らの自発的な集会では、民生法に対する否定的な意見が多数を占めたという。過去の同社に対する尊敬と感謝を口にする取引業者の意見を聞くにつれ、周囲の理解を得るには相当の困難をともないそうだ。
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