NET-IBの読者から「鹿児島の人間だが、地元ではあまり報道されていないため、最近、全国紙やテレビを見て初めて知った」というメールが届いた。実際に、女子生徒の祖父・中村幹年さんも「地元の問題なのに報じられることが少ない」と首をかしげている。
出水市教育委員会(以下、市教委)が「いじめが直接の原因ではない」とする女子生徒の自殺は、他の自殺問題同様に全国紙やテレビ、週刊誌などでも報じられており、遺族が呼びかけている、いじめに関する調査アンケートの開示への賛同署名は、6,000名を超えた。社会の関心は決して低くはない。現場記者の資質の問題かもしれないが、"意図的な不作為"と疑う向きが強まっている。
遺族が実施する署名とは別に、アンケートの開示に関して市教委に"毅然とした態度"を求める署名が行なわれている。今回入手した同アンケート(画像参照)は、「平成24年8月28日」付、実施者は、実名・連絡先などが記されておらず、女子生徒が通っていた中学校の「保護者及びOB有志一同」「吹奏楽部保護者及びOB有志一同」となっている。つまり、差出人不明。それでいて賛同者には氏名と住所の記入を求めているのである。そのような理不尽もさることながら、同アンケートの書面には「二次被害を防止」といった文言も。それを見た遺族はショックを受けている。遺族が開示を求めて実施している署名にも、真相究明だけでなく「4人目の犠牲者を出さないためにも」と、再発防止を訴えているのだ。
市教委がまとめた調査報告書では「女子生徒の部活動ノートが紛失」「女子生徒のスワブが紛失(3年生の靴箱で発見)」といったいじめと見受けられる事象が書かれている。それらの事象に関して、吹奏楽部の顧問に「特に不適切な対応は認められない」としているが、そのほかのいじめに関して把握できていないだけではないか。いじめには、陰口や無視など、目に見えないものもある。また、仲間はずれにせず、囲い込み、表向き親しい友だちのように見せかけていじめるというケースもある。
もっとも市教委の「直接的」という言い方は、関係性をある程度認めるものだ。つまり、女子生徒へのいじめが何らかの影響をおよぼしたことを否定していないということである。市教委が、頑なまでにアンケートの開示を拒む、本当の理由は別のところにあるのではないだろうか。
実は、女子生徒が通う中学校では過去、2人の死亡事故が出ていた。そのことは今回の自殺事故の調査報告書でも触れられているが、いじめが原因とは表記されていない。地元ではその2件もいじめによる自殺と広まっており、今回が3人目となれば、当然ながら、大きな責任問題に発展する。
17日、福岡市で行なわれた民主党代表選の公開討論会で、原口一博元総務相は、16日に出水市を訪れたことにふれ、「教育委員会を根本から変える」と訴えた。同コメントは、党員・サポーターからのいじめ問題に関する質問に応えてのもの。原口氏も、出水市の自殺事故をいじめ問題と認識しているのである。
出水市に関わらず、教育委員会の"隠ぺい体質"は問題視されてきた。そのことがかえって教育現場への不信を高め、いじめによる不登校や自殺がまだ発生している現状へとつながっている。出水市の子どもたちは原口氏に次のように訴えたという。「大人が真実を隠そうとすると、子どもが打ち明ける勇気をなくす」。
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