18日、出水市議会で中嶋敏子市議が、出水市教育委員会(以下、市教委)の一連の対応について質問。自殺事故発生後、全校生徒へ実施したアンケートの"遺族への開示"をめぐり、中嶋市議と溝口省三教育長の見解が相いれることはなかった。
インターネットの掲示板への書き込みなどの二次被害をめぐり、「アンケートを開示し、遺族と情報を共有して真相を解明すべき」と訴える中嶋市議。答弁に立った溝口教育長は、精一杯の努力をして調査報告をまとめたと繰り返し、また、文部科学省の指針に基づいていると何度も強調。さらに、アンケートの開示によって二次被害が起こると、中嶋市議とまったく異なる見解を述べた。
市教委の対応への不信感が背景にあるが、そもそも女子生徒の遺族は、市教委が努力してまとめあげたという調査報告に対して疑問を持っている。最大の問題は、市教委の「女子生徒が受けていたのはいじめではなくいたずら」という見解が、調査の正当性の根拠とする指針を出した文科省の"いじめの定義"から外れている可能性が高いことだ。
文科省は「児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査」のなかで以下のようにいじめを定義している。
本調査において、個々の行為が「いじめ」に当たるか否かの判断は、表面的・形式的に行うことなく、いじめられた児童生徒の立場に立って行うものとする。
「いじめ」とは、「当該児童生徒が、一定の人間関係のある者から、心理的、物理的な攻撃を受けたことにより、精神的な苦痛を感じているもの。」
とする。
なお、起こった場所は学校の内外を問わない。
そもそも調査結果において努力云々を強調することがナンセンスだ。どんなに手間をかけても調査結果が不適切であれば、再発防止策など論じることができない。調査のやり方についても問題がある。まず、調べられる側でもある当事者(学校教員)が生徒への聞き取りなどを行なっていたという調査委員会。次に、調査委員会をチェックしたという第3者の有識者からなる調査専門委員会が、誰がやっていたかが非公開であることだ。出水市の一件は、市教委が行なっているいじめ問題に関する調査自体に検証が必要なことを示している。
4mの金網を登り超えて九州新幹線の線路へ飛び込むという痛ましい死の真相はいまだ解明されていない。本シリーズの第1回で、女子生徒が裸足で登った4mの金網写真を掲載した。現場へ足を運び、実物を見れば「よほどの理由があったのだ」と、誰もが想像できるはずだ。「頑張りましたが、わかりません(直接の原因は確認されなかった)」という報告に、最愛の家族を失った遺族が納得するはずがない。
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