<維新の国政政党化>
今回は、9月になって国政政党を立ち上げた「維新の会」の基本政策である「維新八策」についての分析をするようにテーマの依頼があったのでまずはそちらを行ないたい。
これまでの動きをおさらいしておくと、維新の会は、これまでは国政進出というカードを使って、民主党政権や野党自民党に対して、「大阪維新の会」がもともと基本政策として進めてきた、「大阪都構想」を実現するための地方自治法の改正を求めてきた。通常国会閉幕までにかろうじてそれは通っている。
ところが橋下徹大阪市長兼維新の会代表は、「大阪都構想を完成させるには国政への働きかけ、国政への足場を築かないと、大阪都構想法案は完成できない」と記者会見で述べ、大阪都構想の完成を目指すことを理由に国政への進出へとかじを切った。橋下徹という人は、「2万%無い」といっていた府知事選挙への出馬を手始めに政治活動を始めているので、橋下氏の「~を条件にする」という言葉をまともに受け取ってはいけない。市長は次の衆院選では出ないかもしれないが、必ず最終的には自らが衆院選挙への出馬に打って出るはずである。
維新の会は、9月12日に、大阪市内で政治資金パーティを開き、その直前には、民主党から合流した松野頼久元官房副長官や東国原英夫前宮城県知事や大村秀章愛知県知事、河村たかし名古屋市長、大学教授で経済政策のブレーンの高橋洋一らが参加した政策討論会を行なっている。松野議員らは離党届を出したあとの記者会見で「俺たちは7人のサムライ」だと話した。維新にとっての課題は、国会議員を5人集めて、地域政党ではない、衆院選で比例との重複立候補を可能にする国政政党要件を満たすことにあったが、これがクリアされた。
次の衆院選挙にむけての維新の候補者擁立戦略は、既成政党(主に自民党やみんなの党)の地方議員を奪い取るか、小泉チルドレンや小沢チルドレンのような形で、新人をベイビーズとして育てるかの二種類である。前者は、各地の自民党会派内にある微妙な対立構造を利用するやり方だ。すでに、東京でも、元々自民党にいた数名の議員らが「東京維新の会」を結成している。これは自民党にとってはその地方議員の支持基盤を根こそぎ持っていかれるということでもあり、面白いわけがない。密かに維新の松井一郎幹事長兼大阪府知事との連携を目指してきた、安倍晋三元首相も出馬する代表選の最中は、維新のとの連携については口をつぐみ、他の候補者も最終的には次の衆院選挙で維新がどれだけの票を取れるかということを見てから考えるようだ。
<プロフィール>
中田 安彦 (なかた やすひこ)
1976年、新潟県出身。早稲田大学社会科学部卒業後、大手新聞社で記者として勤務。現在は、副島国家戦略研究所(SNSI)で研究員として活動。主な研究テーマは、欧米企業・金融史、主な著書に「ジャパン・ハンドラーズ」「世界を動かす人脈」「プロパガンダ教本:こんなにチョろい大衆の騙し方」などがある。
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