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SNSI中田安彦レポート

「維新の会」の"維新"とは自民党の世代交代のことかもしれない(5)
SNSI中田安彦レポート
2012年9月25日 07:00
SNSI(副島国家戦略研究所)研究員 中田 安彦

<維新の会の英語呼称を巡る問題>
fukei_1.jpg このように、維新八策だけに存在する特徴として、「バウチャー」「フラットタックス」そして「TPPの強い党是としての推進」というものがあり、やはりこれをみていくと、いろいろなカメレオンの顔を見せるが、維新というのはブレーンであるマッキンゼー出身のコンサルタントや小泉構造改革の流れをくむ米共和党路線にあるとわかる。ある意味では企業主導のリバータリアン(小さな政府・自由至上主義)ともいえるが、相続税による財産没収政策のような点ではまったくそれと異なる政策も掲げる。大きくは自民党の小泉・安倍の路線と変わらない。

 これも前に書いたことだが、そもそも維新の会というのはもともと自民党の大阪府議会議員らの会派のことをいったのである。もともとこの新会派は大阪府庁の移転問題をきっかけに当選回数の若い府議6人を中心に結成されたもので、そこには八尾市選出の松井一郎府議が含まれていた。元々の名前は「自民党・維新の会」というのである。

 大阪維新の会は英語名称をOsaka Restoration Partyという。Restorationとは世界的にはMeiji Restorationというように「王政復古」というのである。もとに戻すこと、返還することを意味するのだ。そこで世界の政治学者たちが、この英語名称に疑問を抱いているという話を知り合いの政治学者から聞いた。なぜReform Partyではないのかということである。むろん、単純に明治維新の英語訳から大阪維新の会が取ってきて英語名称をつけたとも考えられるのだが、そこには深い意味があるのではないか。

 維新の会はどう見ても民主党ではなく自民党に近い。松井府知事らが「自民党・維新の会」を2009年に作り、それが堺屋太一・元経企庁長官や、それとは異なる小泉構造改革のブレーンらに認められて「大阪維新の会」になった。ところが地元に基盤がある大阪維新は別にしても、それ以外の土地での衆議院候補は完全な落下傘候補になるだろう。だから、大阪維新の会は比例票は橋下人気に乗じて自民につぐ得票を得る可能性は高いが、小選挙区では自民党の現在の支部長たちやその後援会と争うことになる。日本全国の300選挙区には地元の議員たちがいるのであり、おいそれと短期間で浸透していくのは難しい。だから、維新塾生で出馬する候補者たちは今回は討ち死に覚悟だろう。4年間、地元周りをすれば、いずれは市議や県議らのつても得られるかもしれないが、すぐには無理である。

 そして自民党総裁選の行方も気になるが、維新に近い安倍晋三候補が勝ったとしても、今述べた理由で選挙を一回終えるまでは維新に提携を持ちかけることはない。過半数以上の安定した与党議席を維持するために連立を持ちかけるかもしれない。「自・公・維」の連立政権構想である。

 今後の維新の議席の延ばし方にもよるが、最終的には自民か維新かのどちらが吸収するかは分からないが、この二党は再び合流することになる。いずれは森喜朗だけではなく町村信孝や細田博之など森派清和会のボス猿政治家たちも引退し、影響力を失っていく。その後は、若手や中堅(小泉進次郎や世耕弘成、安倍晋三、石破茂、林芳正)らの時代だ。

 小泉進次郎・自民党総裁による維新の吸収合併か、橋下維新への進次郎の合流という形で自民党のほうが「敵対的買収」(TOB)を維新から仕掛けられるかは分からないが、「新自由主義的」な自民・維新を主体にする新党が生まれることになるだろう。そんな風に想像を巡らすと維新の会の「復古」とは「自民党一党支配の復古」という隠された意味があるのではないかとニヤリとさせられる。

 これに対抗できるのは、民主党か「生活」か。保守層が強化されるのだから、リベラル層も一層奮起してもらわないといけない。政治家自身が育つことで、官僚主導を脱却するのと同時に、より多様な政治集団が生き残ることも重要だからだ。

(了)

≪ (4) | 

<資 料>
維新八策
国民の生活が第一・基本政策案

<プロフィール>
中田 安彦 氏中田 安彦 (なかた やすひこ)
1976年、新潟県出身。早稲田大学社会科学部卒業後、大手新聞社で記者として勤務。現在は、副島国家戦略研究所(SNSI)で研究員として活動。主な研究テーマは、欧米企業・金融史、主な著書に「ジャパン・ハンドラーズ」「世界を動かす人脈」「プロパガンダ教本:こんなにチョろい大衆の騙し方」などがある。


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