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脱原発・新エネルギー

玄海原発訴訟第2回弁論(2)~思い出のある故郷を離れて
脱原発・新エネルギー
2012年9月25日 17:23

genkoku.jpg 佐賀地裁で9月21日開かれた「原発なくそう!九州玄海訴訟」第2回口頭弁論では、福島県いわき市から避難した牧師の金本友孝さん(51)と同県郡山市在住の人見やよいさん(51)の2人が、東京電力福島第一原発事故の被害を訴えた。
 全国の都道府県のなかで3番目という広大な面積を持つ福島県。福島第一原発から海岸沿いを約30km南下すれば、いわき市がある。郡山市は、原発の西約50kmにある。人口では、福島県内1位が、いわき市、次いで郡山市と続き、県都福島市は3番目となっている。いわき市は、石炭産業から新産業都市指定を経て成長を遂げた東北第一の工業都市、郡山市は交通の要所でもあり商業都市と、おおざっぱに性格分けできる。

<迫る「死の恐怖」に何もできず>
 「それまでの生活は完全に破壊された」。金本さんは、意見陳述で、そう表現した。
 妻(45)と、19歳、15歳、12歳の3人の子と一緒に、いわき市から妻の実家のある福岡県に避難した。口頭弁論後、金本さんは取材に対し「私たちに死の恐怖が迫ったのは事実です。一度死にかけたのに、原発事故をまた繰り返すのはおろかだ。原発をやめなさいと言うべきだ」と語った。

 法廷で陳述した「死の恐怖」――。2011年3月11日、金本さんの自宅も大震災で家のなかがめちゃくちゃになり、ガスも水も止まり、あちこちで火事が起き、救急車や消防車のサイレンが鳴り響くなか、始まった。
 3月12日午後4時頃、「原発が爆発したぞ!今すぐ逃げろ!」というメールが友人から届いたという。国、自治体、東京電力から正式な情報はまったくなく、「死の恐怖」が襲ったものの、「逃げたくても、道はふさがれ、ガソリンもなかった」。
 金本さんは「いつ大爆発が起こるのか、今か、今日か、明日かという不安」があるのに何もできない。逃げ道はなく、死を待つだけと感じた。その恐怖を、「墜落する飛行機に乗っているようだった」と振り返る。3人の子どもたちに、「せめて、苦しまないで死ねるように祈りなさい」と話した。そのときの「もちろん死んでほしくなんかない。せめてもの親の気持ち」を、裁判官に訴えた。

<命の責任はとれない>
 「死の恐怖」のなか5日間が過ぎ、3月17日、ガソリンが手に入った。しかし、「家のなかにいた方が放射能の影響が少ないのではないか、ガソリンが切れて立ち往生するのではないか」と、迷いがよぎる。仕事のあてもなく、3人の子どもを抱えて食べていけるのか――。
 しかし、葛藤よりも「死の恐怖」が上回り、避難を決断した。「この頃、いわき市民の約3分の2が避難したと聞いている」と陳述した。
 避難者優先で車線が確保された常磐自動車道を走って東京まで避難したが、原発が爆発する不安から南へ南へと避難し、ついに3月25日に福岡県にたどりついた。幸い、牧師の仕事が見つかり、いわき市に戻らないことを決めた。子どもたちにとって生まれてからずっと生活し、すべての思い出があるふるさとを離れて...。「放射能に汚染されているところに(子どもたちを)行かせるわけにはいかない」(金本さん)。
 「子どもたちが浴びてしまった放射線でどんな影響が出るか、不安で仕方がない」という金本さんは、法廷でこう訴えた。
 「九州まで避難したが、ここにも玄海原発がある。原発の影響がないところはない。子どもたちを危険にさらすのはやめてください。『安全だ』『責任を持つ』と言うが、神様でない限り命の責任をとれるわけがない。再び起こる悲劇を防ぐには、今原発をなくす決断をするしかない」。

<住み続ける人にも続く被害>
 東京電力福島第一原発事故により放射能で高濃度に汚染され、居住・立ち入りが制限されている警戒区域など避難指示区域からの避難者は11万3,000人とされている。避難者は、避難指示区域以外を含めると福島県全体で、15万8,000人にふくれあがる(いずれも福島県発表。2012年1月時点)。

 いわき市も郡山市も、避難指示区域ではない。しかし、原発事故前に人口34万1,000人だったいわき市は、9月1日時点で1万人以上減少した。事故後3カ月間で県外への転出が5,000人以上に上った。郡山市も人口流出は止まらず、33万9,000人から32万8,000人に落ち込んでいる。住民票を移動していない避難者は、もっと多いと見られる。
 それぞれ市のホームページを見れば、小中学校、公民館、公園などの空間放射線量が連日公表されている。その数値は、たとえば、ある小学校の校庭で毎時0.3マイクロシーベルト、公民館では0.8となっている。
 東京電力の技術者だった小野俊一医師によれば、原発施設内で汚染を隔離する必要があるC区域(1平方メートル40キロベクレル)の汚染濃度を空間線量率に換算すると、0.13マイクロシーベルトになるという。

 福島第一原発からは、放射性物質が大量に放出され続けている。東京電力の発表(9月24日)でも、大気中に放出している放射性セシウムは今でも毎時1,000万ベクレルに上る。
 避難した人にも、住み続ける人にも、原発事故の被害は続いている。

(つづく)
【山本 弘之】

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