世界一平和な国、アイスランド。日本も平和度で第5位だが、それより居心地が良さそうだ。現に人々はみな親切で、とても破綻して荒廃した国には見えない。調べてみると、アイスランドは債務を国民負担とせず、踏み倒していた。
2009年、政府は国家の負債として35億ユーロをイギリスとオランダに月賦で15年間、5.5%の金利で支払うことにした。国民はわずか31万人だから、当時のレートで1人170万円の借金が、高い金利と共に背負わされた。翌年にはお決まりの銀行への公的資金投入。資金は国民の救済ではなく、英国などの大口預金者救済に使われる。
ところが国民が強く反発、大統領が提案を拒否した。2010年3月6日に国民投票、93%の圧倒的多数により債務支払いが拒否された。代わりに危機を招いた銀行家などを捜査し、多くの企業役員らが逮捕された。しかし大口預金者の損失を肩代わりしていた英国などはこれに反発、再度圧力をかける。
2011年2月、アイスランド政府は再度公的資金投入を決定した。ところが再び大統領が拒否権を発動、2011年4月に再度の国民投票、再び否決するとともに国民の住宅ローンを免除した。人々は圧迫されるどころか、海外投資家に奪われるはずだった資金で国民を救済したのだ。こうしてアイスランドは、国民1人当たり170万円もの負担を強いられるところを2度も蹴り飛ばし、安定に戻っていたのだ。
アイスランドは政府と金融機関が勝手に作った借金を国民のツケにさせなかった。ギリシャも同じように政府と金融関係者を逮捕し、彼らから負債を取り立てればよかったのだ。当然金融機関も有罪だ。そう、このやり方が知られると困るからアイスランドの金融危機は隠されてしまった。日本の財政危機もまたすでに常識の範疇になっている。アイスランドと同じ方法を採用したらどうだろう。独自の言語や文化を大事にしてきたアイスランドは、日本と共通点も多いのだし...。
<プロフィール>
田中 優 (たなか ゆう)
1957年東京都生まれ。地域での脱原発やリサイクルの運動を出発点に、環境、経済、平和などの、さまざまなNGO活動に関わる。現在「未来バンク事業組合」「天然住宅バンク」理事長、「日本国際ボランティアセンター」 「足温ネット」理事、「ap bank」監事、「一般社団 天然住宅」共同代表を務める。現在、立教大学大学院、和光大学大学院、横浜市立大学の 非常勤講師。『シリーズいますぐ考えよう!未来につなぐ資源・環境・エネルギー①~③』(岩崎書店)、『原発に頼らない社会へ』( 武田ランダムハウス)など、著書多数。
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