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経済小説

「維新銀行 第二部 払暁」~第1章 谷野頭取交代劇への序曲(11)
経済小説
2012年10月 4日 07:00

<二頭体制崩壊の背景(11)>
 2003年4月24日(木)、西部県防衛協会の理事会が、維新銀行西京支店の会議室で午後1時より開催された。西部県防衛協会は防衛意識の普及をはかって、自衛隊および関係団体の健全な育成発展に協力することを目的として1964年10月に設立され、初代会長は大手水産会社である太平洋漁業の明石治三郎社長が就任したが、2代会長からは維新銀行の絹田頭取、3代会長に植木頭取が就任。歴代維新銀行が会長職を引き受けることになり、植木会長が亡くなった翌年の1997年6月に谷本亮二頭取が4代会長に就任した。

 谷本頭取は相談役を退いた後も、協会の会長ポストはそのまま続けることになった。また防衛協会の事務局長も歴代維新銀行西京支店長が引受けており、事務局長は組合幹部出身の吉沢忠常務であった。防衛協会の理事会は、前期の決算と来年度の予算および行事日程を承認し、午後3時に無事閉会した。

理事会が終わると、谷本は吉沢常務を呼び、2人だけで西京支店の支店長室に入った... 理事会が終わると、谷本は吉沢常務を呼び、2人だけで西京支店の支店長室に入った。
 谷本は、
「実は会長の栗野君が僕のところに来て、最初は何とか谷野頭取に合わそうと努力したらしいが、あまりにも独善的でついていけなくなったと泣き言を言ってきた。赤字決算については、僕にも栗野君にも、ほとんど事前の相談もなく押し切ってしまったが、君は谷野君をどう思うかね」
 と、話を切り出した。
 吉沢は、
「谷野頭取の相談役への態度を見ていると先輩に対して失礼ではないかと思うことがあります。特に最近相談役とも口を利かなくなったのではありませんか」
 と、問いかけてきた。
 谷本は、
「谷野君が、栗野会長は対外的な活動が主体だから、融資の稟議などは回さないで会長に関係する稟議だけを回せばいいとか、連名での挨拶文は必要ないとか言ったらしい。それを聞いて栗野君は、もう谷野君とは一緒にやっていけなくなったと言ってきたが、君と谷野君との関係はどうかね」
 と、聞いてきた。
 吉沢は、
「谷野頭取の谷本相談役や栗野会長への接し方を見ていると問題があると思います。役付役員同士でも話題になるのですが、沢谷専務、安芸本部長の北野常務それに営業本部長の川中常務からも谷野頭取のやり方はあまりにもひどいとの話が出ています。わたしも最近谷野頭取に不信感を持つようになりました」
 と、谷本の顔色を窺うように言った。

【北山 譲】

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※この作品はフィクションであり、登場する企業、団体、人物設定等については特定したものでありません。


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