本日（2012年10月５日）付の西日本新聞朝刊の社会面に「さかえ屋決算粉飾」の記事が掲載された。これは他紙（朝日、読売、毎日、日経）には掲載されておらず西日本新聞のスクープ記事である。だが、この話は今年の春先の出来事であり、今年４月末に中野利美・前社長を始めとした創業家出身の全役員が退任する時点でわかっていた話。しかも、経済面ならともかく社会面に掲載されたことでちょっとした"事件扱い"されていることにも驚きを隠せない。役員の退任から約半年後のこの時期に、何故、福岡県民に大きな影響力を持つ西日本新聞がこのように報じたのか？大きな疑問が残る。

　新聞記事に掲載してある３億円の架空在庫を計上し、利益を出していたことは確かに問題である。だが、複数の公認会計士や弁護士が「会社法の特別背任罪や刑法の私文書偽造罪などに抵触するおそれがある」と指摘するほどの仰々しいものではない。それは中小企業が金融機関から融資を得るために複数の決算書を作成することは決して珍しい話ではないからだ。中小企業の約８割が赤字経営と言われている中で、銀行向けに内容の良い決算書を作成する中小企業の経営陣に経営責任を取らせる社会になれば、会社経営を断念する経営者が続出するだろう。そして大量の失業者を生み出すことも懸念される。もし、粉飾決算したことを理由にさかえ屋の前経営陣に経営責任を取らせて退任させたのなら、それは同社を事実上管理下に置く西日本シティ銀行の横暴と言っても過言ではないだろう。

　なお、さかえ屋の全役員退任については、すでに４月の時点で、不肖ながら私、矢野が報道済みである。

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