前回述べたA施設では、担当者からC社との取引内容について聞き取ることができた。そこで疑問に感じたのは、契約段階で本来紙おむつを回収すると聞いていた関連会社の車両を「契約してからの約半年間見たことがない」という証言であった。消耗品の削減や他商品への切り替えなど考えても、老人ホームという業態上、必要最低限の紙おむつが消費されることは誰の目にも明らかである。しかし一方で、リネンの配達・回収を行なうC社の車両は一定間隔で目撃されている。
この時点で事実と言えるのは、(1)使用済み紙おむつは透明の袋に入れられて施設横の倉庫に保管されていたこと、(2)その紙おむつをいずれかの会社が回収を行なっていることである。なお特別取材班はA施設の取材時、偶然にもC社の車両の後扉が開かれたままで駐車されており、荷台のなかに回収されたリネン入り袋以外に白と青の物体が入った透明の袋が積み込まれていたことを目撃した。
C社の不正が疑われる行為について、A施設の担当者へ問うと「契約業者(C社)を信じるしかない部分があった。もし、そういった行為がなされているとすれば、契約解除せざるを得ないだろう」とコメントした。
廃棄物の排出事業者が、なぜ収集運搬や処理について注意を払う必要があるのか。これには、廃棄物処理法に定められている排出事業者の責任問題がある。たとえば、廃棄物処理の無許可営業(一般廃棄物・産業廃棄物に関わらず)を行なうと、「5年以下の懲役若しくは1,000万円以下の罰金、又はこの併科」という刑罰が科せられる。さらに、無許可の業者に対して廃棄物処理の委託を行なった排出事業者に対しても、委託基準違反として無許可業者と同等の罰則が科せられる。一度そういった事態となれば、会社・施設運営に重大な影響を与えることは必至であり、失われた信頼を取り戻すのは至難の業であろう。
さらに許可を与える側の意見を聞くべく、行政に対しても取材を行なった。
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