時代が大きくチェンジした。中国は《中華思想の復権》を企む大国、日本は老衰していく老人国家と様変わりしている。150年前、大帝国であった清王朝は衰退し西洋列強に侵略を繰り返されていた。そこに明治維新を達成した東アジアの新興勢力・日本が衰退していく清王朝に難問を吹っ掛ける攻勢をかけた。今、まさしく150年前の逆再現だ。【中国カントリーリスクにいかに対処するか】のシリーズを連載していきたい。
<【戦争が起きる】と信ずる上海市民>
筆者は根っからの《親中派》であった。しかし対象がチェンジしたのであればこちらも志向を改める必要がある。何がチェンジしたのか。中華人民共和国は200年ぶりに【中華主義国家】に里帰りしたのである(後記する)。明治時代から1945年までの日本が中国への侵略した行為に関しては一言も弁解の余地はない。しかし、1972年、日中国交回復した以降、罪滅ぼしの経済的補償を行なってきたはずだ。日本政府はこの点をしっかりと宣伝すべきだ。中国人民に対して精力を使ってもう少し伝えるべきだ。
上海で17年、ビジネスを行なっている経営者が呆れて語った。「上海の一般労働者は《日本と戦争になるぞ》と浮足立っている。それだけ緊迫している」。中国の田舎でのことであれば気も和らぐが、世界有数の大都市・上海の市民がこれだけ危機感を抱いているとは憂しきことだ。これだけの「人・情報」が往来するようになった現代でも日中の国民・市民たちが相互無理解という事実には驚く。尖閣列島の領土問題に関しては、いずれ対立の炎は上がったにしろ今回の野田首相の処置は稚劣であった。中国への無知ばかりが目立つ。
<中華主義の復権>
尖閣列島の領土所有権を中国側は騒ぎ立てるが、南シナ海の島々の領有権を巡る中国の覇権主義は批判の対象にはならないのか!!フィリッピン・ベトナム・マレーシア・インドネシアなどが大人しいことに付け込んで傍若無人の振る舞いである。ある識者は「中国にしてみれば原油・ガスなどのエネルギー輸送の安全確保のために南シナ海を我が海域にしたい魂胆がありありだ」と解説する。表面的分析は正解であり反論するつもりはない。だが本質は≪中国の変貌≫という捕捉が大切だ。
近代の200年間、中国は欧州列強から侵略を受け続けてきた(最後は黄色日本人から侵略された)。結果、【漢民族のプライド=中華思想】を失ってしまった。毛沢東中国共産党の革命は「中国人民のプライドを取り戻す民族独立回復」の戦いであった。国民党との内戦を勝利して社会主義革命を成就した。1949年10月のことであった。しかし、経済復興発展の目途をつけるまでには40年の時間を要した。
1990年を起点にして【経済躍進の大変革】が20年持続した。中国は日本を抜き「世界第2位の経済大国」に躍進したのだ。そうなれば4,000年間、中国人民体内に脈々と流れていた【中華思想】が蘇生されてくる。「なーに!!南シナ海。尖閣列島は昔から和我が中華大国の海域ではなかったか。今までは使用するのを認めていたのだ」という理論武装で対応してくるから全く悪びれた様子はない。だからこそこちらも相当の覚悟の必要がある。そうでないと交渉にはならない。
【インドシナ半島】という由来はインド・中国のそれぞれ王朝の力関係で勢力分布が変わったという歴史背景があるのだ。だからベトナム、ラオス、カンボジア、ミャンマーなどには中国に対する歴史的な警戒心のDANが刷り込まれている。ミャンマーが突然、政治・経済の開放策に転じたのは「中国一辺倒の経済支援では実質的な隷属化状態になる」という危機感を抱いたからである。上記の国々はすべて≪親日≫だ。
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