イマドキの若者、主に17歳~27歳(2012年度)は「ゆとり世代」と呼ばれることがある。校内暴力・いじめ・不登校など学校教育や青少年に関わる数々の社会問題を背景に、1996年、文部省・中教審委員にて「ゆとり」を重視した学習指導要領を導入。学習内容および授業時間数の削減、さらに完全学校週5日制実施・総合的な学習の時間新設・絶対評価により、詰め込み型教育から脱却し、社会性・自立心・国際性・社会貢献意識といった全人的な「生きる力」の育成を目指した教育環境を整えようとした。
そうした学校教育環境で育てられた、イマドキの若者に対する世間の評価はこうだ。「学力が低い」、「社会人としての挨拶やマナーが身についていない」、「のんびりしていて競争意欲がない」、「仕事やお金に対してガツガツしていない」、「コミュニケーションが苦手」。だが、現場感覚では少し異なっている。
私は96年以前の87年から小中学生の教育に携わり、97年には総合進学塾Kゼミナール(対象:幼児・小中学生~高校生)を設立するなど、イマドキでない世代から「ゆとり世代」まで15年間現場で教育し続けてきた。今は「ゆとり教育を受けたその後の若者」たちを10年間教育しているが、挨拶もマナーも備わっているし、コミュニケーション能力はむしろ高くなっていると感じることすらある。
ただ、規制緩和も後押しし大学数が25年間で1.7倍に、大学生数は1.6倍にふくらんだことで、学力が低くコミュニケーションに難がある学生が相対的に増加したことは否めない。そして、のんびり・nonガツガツは現場でも感じることだ。また、コミュニケーションに関しては、先輩や教師や年長者との対話が苦手である。これら負の現象は、時間効率や成績よりも、チームで仲良くじっくり話し合う学習、競争より協調して順位をつけない教育、すべてが個性でオンリーワンであるという価値観によって形成されたものだと推察する。
この学校教育の歴史のなかにこそ、若者育成法の手がかりがある。のんびり世代に売上に貢献するよう「ガツガツ」した精神を植え付けようとしたり、競争して1番を目指せと喝をいれたりして失敗した経験はないだろうか。
おそらく最初の数日間は、彼らの「ありのまま」を受け容れ、理解することに努めたかもしれない。しかし、「もうガマンの限界だ。どれだけ待っても変わらない。やはり叩き込むしかない! 結局それが一番のやりかただ」と、教育側の忍耐が続かない。そこに問題がある。
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<プロフィール>
小路 智広 (こみち ともひろ)
炎の教育探求家(学習塾講師時代に同僚が命名した)自身が大学生のとき、腎臓病の完全克服を期して自転車による九州一周の旅を敢行するなど、一徹な面と寛容な面を併せ持つ。これまで学習塾における学生教育・受験指導・教室経営、大学生をはじめとした若者の就職支援及び中高年層の転職支援、そして、企業における社員教育研修を行なってきた。
講義・講演数36,000回。指導者数はのべ35万人以上と九州でNO.1,日本でも有数の実績を誇る。大学教員として5年間「キャリア開発学演習」の教鞭をとっていた2007年には、「これからの働き方」をテーマに日本全国47都道府県を51日間で一周し取材を行った。8年間教鞭をとっている九州大学自己表現能力育成プログラムでは「愛と人生」をベースにした講義で人気が高く、これまで1,000名以上が受講している。
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