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「竹島」「従軍慰安婦」をめぐる断章(2)~領土問題を決定するのは「軍事力」と「外交力」
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2012年10月17日 07:00

 自宅に遊びに来た韓国からの男子留学生に、かつて、日韓関係史の大学教育用ビデオ(北岡伸一監修・丸善書店編)を見せたことがある。すると、場面が李承晩ラインのくだりに 来たとき、彼が憤懣いっぱいな表情で「イ・スンマンはこんな酷いことをしていたのか」と言ったので、こちらが驚いた。

 別の話もしよう。竹島問題をめぐって、ノ・ムヒョン政権が「外交戦争」とかの言葉を使い、けんか腰の姿勢を見せた。このときソウルに在住していた僕は、韓国大手紙の論説委員と昼食をとりながら話をした。
 すると、彼が曰く「独島問題はいろいろ調べてみたが、やはり、韓国側にとって最大の功績者はイ・スンマン博士だ」と。僕自身もそう考えていたので、「やはり、そうですか」と答えた。

 竹島(独島)問題を含め領土問題は、歴史学の問題ではない。きわめて、国際政治学的な問題だ。軍事、外交上の問題だ。4年ほど前、自分のブログでこんなことを書いたことがある。


 ~~また、竹島(韓国名・独島)問題である。日本政府が中学の新学習指導要領の解説書に、日本の領有権を明記する方針を決めたからだ。日本の立場からすれば当然の記述だが、韓国は猛反発した。駐日大使が召還され、日韓外相会談が見送りになり、9月に予定されていた李明博大統領の訪日も危うくなった。
 竹島問題は日韓関係の成熟度を測るリトマス試験紙である。竹島の領土紛争に「解決策」はないからだ。
 紛争の火種を、双方の政府がうまく「コントロール」する以外に妙案はない。韓国側の"興奮"はいずれ冷める。今回は2、3カ月だろうか。竹島問題をめぐる日韓の情報量と関心度の落差は、相変わらずである。
 韓国が連日トップニュース扱いで反応するのに比べ、日本側の報道は「ワン・ノブ・ゼム」だ。~~


 当時はまだ「鈍感」だった日本側も、さすがに李大統領の「竹島上陸」「天皇への侮辱発言」が相次いでは、"堪忍袋の尾が切れた"というのが今回の事態である。

 韓国人にとって、「独島」は一種の信仰である。幼い頃から「独島はわが領土(トクトヌン・ウリタン)」意識を刷り込まれ、日本側が少しでも触ると、強烈に反応する。このあたりの事情は、釜山出身の玄大松(ヒョン・デソン)氏の著書「領土ナショナリズムの誕生」(ミネルヴァ書房)に詳しい。

korea.jpg 韓国人でも、研究者レベルでは、冷静に判断できる人は少なくない。林志弦(イム・ジヒョン)漢陽大学教授もその人だ。彼は、かつて韓国紙に投稿された韓国人の自然保護運動家の主張を引用して、「独島は韓国のものでも、日本のものでもない。カルメギ(かもめ)たちの島である」との趣旨の発言をしたことがある。ソウル大学新聞のインタビューに答えて、そう述べた(わざわざ林教授に面会しに出かけたので、よく覚えている。姜尚中・東大教授のナショナリズム論を批判したのが、興味深かった)。

 これらは国民国家の形成、領土確定の歴史を勉強すれば、簡単にわかる理屈だ。
 たとえば、日本の場合でもそうだ。明治政府は、1880(明治13)年に先島諸島(宮古島・石垣島など)を清へ割譲することを申し出て、清との合意がいったんは成立したこともある。
 しかし、清が態度を変えて条約に調印しなかったため、領有問題は1894(明治27)年の日清戦争まで持ち込まれ、結局、戦争に敗れた清は、琉球に対する日本の主権を認めざるを得なかった。そんな近代史の史実は、すぐに発見できるのだ。

 僕自身も韓国で行なった何回かの講演会で、このような主張を何回となく紹介してきた。 すると不思議なことに、要領よく反論できる韓国人はいなかったのである。「国民国家」という概念ですら、韓国では一般的ではない。「領土ナショナリズム=信仰」だから、その根拠を問われても、うまく回答できないのであろう、と一人合点するしかなかった。
 最近読んだ本では、「日本の領土問題」(保阪正康・東郷和彦著、角川ONEテーマ21)がおすすめだ。
 「1905年の時点で、竹島がいずれかの国の領有権に服していたということはなく」(107ページ)という東郷氏の見解は、「竹島はもともと、日本のものでも、韓国のものでもない。あえて言えば、カモメたちの島だった」という僕の考えに近い。領土問題を決定するのは、軍事力と外交力である、と改めて付言しておきたい。

(つづく)

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<プロフィール>
下川 正晴(しもかわ・まさはる)
1949年鹿児島県生まれ。毎日新聞ソウル、バンコク支局長、論説委員、韓国外国語大学客員教授を歴任。07年4月から大分県立芸術文化短期大学教授(マスメディア論、現代韓国論)。


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