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「竹島」「従軍慰安婦」をめぐる断章(3)~日本人は堂々と韓国人に話せ!
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2012年10月18日 07:00

 9月16日の大分合同新聞国際面。韓国の政治学者・ヤンギホさん(聖公会大学教授)への大型インタビュー記事が載っていた。聞き手は、共同通信論説委員長。ヤンさんの見解(3本の立て見出し部分『人間が品格を持って生きる日本」「グローバリズムに乗り遅れる次の世代」「領土問題を矮小化していく知恵が必要)に、さしたる異議はない。

 ただ、従軍慰安婦問題で、彼が「(日本政府に)誠意が見られない」と言ってる部分は、ちょっと違う。1965年の日韓基本条約(請求権は完全かつ最終的に解決)、さらにアジア女性基金の「償い」を韓国側が拒否したことに、彼は触れていない。ヤン教授の紹介に「韓日未来FORUM運営委員長」とある。僕は在韓中、このフォーラムで唯一の日本人メンバーだった。ヤン教授らと数々の論戦を演じた。
 日本の新聞のインタビュー記事の通弊は「相手にしゃべらすだけで、聞き手との双方向の議論がない」ことだ。日本人はもっと堂々と、韓国人に話すべきである。

 8月31日の毎日新聞朝刊3面「金言」。西川恵専門編集委員が、<「慰安婦」対立広げるな」>という論評を書いている。同感である。
 ポイントはここ。<慰安婦問題に対立を広げることは、歴史問題の脈絡の中に竹島問題を置こうとする韓国の主張にはまることになる>。「歴史」を振りかざす韓国に対して、日本は「事実と国際法で対抗すればいい」との主張だ。

 西川記者は欧州政治の専門家だが、ここ数年「日韓フォーラム」(政府間で設置した識者討論の場)のメンバーとして、研鑽を積んできた。もともと英仏など欧州の旧帝国主義国家が、アフリカなど新興国家の「ポストコロニアル」論争に巻き込まれている現状(例:ダーバン会議)を熟知していた。
 今年の「日韓フォーラム」は日韓対立のあおりで流会になったが、この「金言」を書いたことで、西川記者はジャーナリスト(時代の記録者)としての責務を果たしたと言って良い。

 日本は「アジア女性基金」を通じて総理書簡、償い金、医療支援を行ない、慰安婦問題にきちんと対応してきた。「強制か」「性的奴隷か」などの語句解釈に挑発され、国際政治の大局を見失うのは回避すべきである。韓国が「歴史」という言葉で、「現在の道徳意識」を振りかざしているのは、自明の理だ。「現在を統制する者が過去を統制する。過去を統制する者が未来を統制する」(ジョージ・オーウェル「1984』)という言葉を、銘記したい。

 2カ月ほど前、僕の研究室に訪問者があった。ここでは「日韓関係者」とだけ紹介しておこう。いささか立場が微妙な方だからだ。僕が8月下旬、ソウルに滞在していたことを知り、「韓国の様子を知りたい」と訪問されたのである。主に「韓国には日本のことを知る人が少なくなった」ことを話した。そのさわりは、僕のフェイスブック(8月22日)で書いている。


 ~~韓国に来て、いろいろな「竹島」関連の新聞論評を読んでいる。痛感するのは、日本という国を、肌身で理解できる韓国人がとても少なくなったということだ。特に「天皇個人」「象徴天皇制」への理解は皆無に近い。「日本人が神のように考えている天皇に対する(韓国大統領の)暴言が日本人を怒らせた」というような言い方は、まだ、ましなほうだ。しかし、現代日本人が天皇を「神」のように考えている訳ではない。国民とともに悲しみ、ともに喜ぶ天皇・皇后の存在感が、とりわけ3・11以降、日本国民の中で高まっている。韓国の場合、東京特派員の一部がわずかに、そのことに気付いている程度だ。日本人の中でもっとも「親韓国的」「親沖縄的」と言ってよい「天皇、皇后の真実」を隣国人すら知らないのは、日本の学界や新聞の責任でもある。(以下略)。~~


 そんな風な話を、この「訪問者」にした。
letter.jpg 一連の会話のなかで、この「日韓関係者」が一番驚いたのが、写真の「首相から手紙」だったのには驚いた。従軍慰安婦への償い事業として行なわれた「アジア女性基金」の償い金(200万円)支給に際して同封された「日本国総理の手紙」のことである。

 以下、アジア助成基金のホームページから引用する。


 <アジア女性基金は日本政府が「慰安婦」問題に対する道義的責任を認め、反省とお詫びを表明したことに基づいて、国民的な償いの事業を政府との二人三脚によって実施するものであることが明確にされました。その事業は、当該国や地域の政府、ないし政府の委任による民間団体が認定した元「慰安婦」の方々に対して実施されます。国民的な「償い事業」は三本の柱からなっています。
 第一は、総理の手紙です。手紙は、「慰安婦」問題の本質は、軍の関与のもと、女性の名誉と尊厳を深く傷つけたところにあるとして、多くの苦痛を経験し、癒しがたい傷を負われたすべての人々に対し、道義的な責任を認め、心からのお詫びと反省を表明するとしています。(以下略)>


 「こんな書簡まであったのですか」――と、その人は驚いた。僕は、日韓基本条約(1965)で「個別請求権は完全かつ最終的に決着した」こと。しかし、その後、在韓被爆者、サハリン残留韓国人、従軍慰安婦に関して「人道的措置」が日本政府によってとられたことを説明した。話をしながら、僕は「みんな、よく知らないないのだなぁ」と思うしかなかった。その人は「先生の話を聞いて、頭のなかがよく整理できました」と言ってくれた。

 僕は「日韓関係論」を専攻する学者ではない。しかしソウル特派員として、1980~90年代の事情は、つぶさに観察して来た。これが僕が「日韓コミュニケーション論」を開講している理由の1つになっている。

(つづく)

≪ (2) | (4・終) ≫

<プロフィール>
下川 正晴(しもかわ・まさはる)
1949年鹿児島県生まれ。毎日新聞ソウル、バンコク支局長、論説委員、韓国外国語大学客員教授を歴任。07年4月から大分県立芸術文化短期大学教授(マスメディア論、現代韓国論)。


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