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チャイナビジネス最前線

中国カントリーリスクにいかに対処するか(3)
チャイナビジネス最前線
2012年10月18日 13:00

 日本の尖閣諸島国有化に端を発した中国側の反日感情。中国国内では至るところで連日のように反日デモが起こり、デモ隊の一部は暴徒化して反社会行為に出るなど、社会問題化している。政治に翻弄される事態がしばしば起こる中国で、チャイナリスクにはどう向き合っていくべきか。地場中小企業の中国進出支援に注力している一般社団法人九州・アジア連携協議会の中山良一代表理事と国吉澄夫事務局長にお話をうかがった。

<これまでにも山あり谷ありの歴史>
1018_k_2.jpg 中山 70年代から中国とビジネスで関わっているが、中国ビジネスにおいてのリスクは大きく分けて2つあります。ひとつは今回のような政治的リスクで、もうひとつは中国人独特の商慣習のリスクです。商慣習リスクは、中国人は平気で約束を守らない、自分の都合の良い方向に持っていくなど、日本人が当たり前に思っている商慣習が、中国人には通用しないということです。以前は、中国とビジネスをする人はごく限られた人だけでしたが、最近は誰でも中国ビジネスに参入するようになりました。このような商習慣は昔から全然変わっていないのですが、対中国ビジネスに詳しくない、いわゆる素人が数多く参入してきたことによって、このリスクが高まってきました。

 そして、今回の政治的リスクについてですが、これは我々ビジネスをする立場の人間としては、極めてコントロールすることが困難なリスクです。ただ、対中ビジネスにはずっと付いてまわることを認識しないといけません。中国政権は「愛国」と称して、反日教育をやっています。それは、政権を維持するため、現政権の国民からの批判をそらすためなど、さまざまな要因がありますが、自発的に出る場合もあれば、政府自体が煽っている場合もあります。

 今回、最も考えないといけないのは、中央政府が制御できないレベルにまで反日デモが大きくなったことです。ついにはパナソニックにまで被害が及びました。昔から中国人には「井戸を掘った人を忘れない」という言い伝えがあり、「水を飲む時は井戸を掘った人の苦労を考えながら飲むように」とされてきました。日中間の架け橋となって尽力してきたパナソニックは日中プロジェクトの象徴的存在でしたが、今回の暴動は、日中のパイオニアさえも破壊したのです。日中間の歴史を知らない人が暴動を起こしたということでしょうが、対中ビジネスに深く関わってきた者としては、大変ショッキングなことです。言い換えれば、中央政府もここまで事態が深刻になるとは思っていなかったのでしょう。中国にとっても「井戸を掘った人を忘れた」のなら、大きな損失になることは間違いないでしょう。

<後手に回って"制御不能"の戦略ミス>
 国吉 大前提で言えることは、ビジネスマンは政治に無関心であってはいけないということです。そして、平和であってこそ、ビジネスは発展し、戦争で一儲けしようなんてことは考えてはいけないことです。日中間はこれまで、「引っ越しのできない隣人」と言われてきました。アヘン戦争以来、周辺国とどう戦っていくか、植民地支配を乗り越えた結果、今日の中国があるのですが、国民の中で「愛国心」という言葉がずっと根付いてきました。「愛国心」が反日教育にすりかわって結びついてきました。「引っ越しのできない隣人」ならば、どうやったら良い関係になれるかを考えないといけないのです。

 江沢民時代と胡錦涛時代の大きな違いは、江沢民氏は「愛国」についてひんぱんに発言していました。反日教育は江沢民時代に根強くなりました。しかし、胡錦涛政権は、日本を経済大国と見なして、国益のために日本との関係を重視する「対日新思考」の考え方に近いとされています。しかし「対日新思考」を唱えると、国内からはいまだに批判が根強い状況です。これまでも胡錦涛政権時に、尖閣問題がたびたび起こりましたが、あまり報道されなかったのも、政府が火消しをしてきたからに他なりません。尖閣国有化宣言の直前、野田首相と胡主席の「立ち話会談」で、「国有化だけはやめてほしい」との要望があったようですが、ほどなくして国有化が実行されました。そのことで、胡主席のメンツが潰された結果、胡主席は今回のデモを止めなかったとされています。

 いつの時代にも現政権に対して批判的な人はいますし、反日という言葉を使って騒ぐ人も大勢います。大事なのはこれを国家的危機にまで発展させないようにすることでしたが、今回は後手に回った結果、そうはいかなくなってきたという戦略ミスです。

(つづく)
【杉本 尚丈】

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