なぜ、ここまで業績が悪化したのか。同社の有価証券報告書によれば、主軸である前臨床事業が、医薬品業界における大手製薬企業(メガファーマ)の合併によるパイプラインの絞り込み、基幹製剤の特許期限切れに関する2010年問題、東日本大震災の影響などから大幅に売上高が落ち込んだためという。
一方、貸借対照表からみる財務状況では、直近で経年的にその経営指標を低下させてきている。自己資本比率は連続赤字の損益状況の悪さから、10年23.2%、11年20.2%と過年度蓄積の剰余金を食い潰し、12年は11.8%まで低下。総資産が相対的に圧縮されているなか、有利子負債依存比率は10年52.4%、11年56.4%、12年63.6%と依存率を高めている。
同社の事業セグメントでもっとも売上高が大きいのは前臨床事業で、12年3月期の総セグメントの生産実績151億7,288万円のうち99億9,388万円を占める。人の診察や疾病の治療などに使用する医薬品開発は、その薬剤が人体に及ぼす影響を調べるために、その薬剤を動物に投与し事前に効果を確認することが薬事法で定められている。これがいわゆる前臨試験床で、サル、イヌ、ウサギ、ラット、マウスなどが実験動物として使われる。「安全性試験」「安全性薬理試験」「薬効薬理試験」「薬物動態試験」の主要な4種類が厚生労働省によって義務づけられている。
前臨床事業の売上は、主に鹿児島本店・安全性研究所とアメリカのSNBL U.S.Aによって支えられている。新日本科学単体の売上高は12年3月期で108億9,891万円、それに対し当期純利益は▲59億5,049万円となっている。連結純利益とは26億4,639万円の差があるが、これはSNBL U.S.A分の投資損失引当繰入額52億2,381万円を連結修正により消去しているためと見られる。
そのSNBL U.S.Aの売上高は26億1,400万円で海外事業の主力だが、経常利益▲20億9,700万円、当期純利益▲24億3,400万円と3期連続の赤字となっている。総資産80億9,100万円のうち純資産17億5,900万円を有しているが、今期も同等の赤字となれば海外事業で主力のSNBL U.S.Aが債務超過に転落する可能性もある。
<COMPANY INFORMATION>
■(株)新日本科学
代 表:永田 良一
所在地:鹿児島市宮之浦町2438(本店)
東京都中央区明石町8-1(本社)
設 立:1973年5月
資本金:53億9,105万円
売上高:(12/3連結)152億7,396万円
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